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35ばんめ ページ36

一郎視点


Aの無事を知って引っかかっていた胸の塊はすっかりなくなっていた。

とにかくAが無事でよかった。

その事実だけで十分だった。


「おい」


後ろの方で、左馬刻の声が聞こえる。

Aを抱きしめたまま、抱っこして左馬刻の方を向いた。



「このクソガキが家出した原因がてめぇかよ」

「…今回の借りはまた返す」

「あ゛?いらねぇよんなもん」


いつもなら借りは倍にして返せとか言いそうなやつなのに。

珍しい。あの左馬刻が返さないでいいなんていうなんて。

…何か、企んでいやがるのか?


「しゃましゃ、あぃあと」


左馬刻へ向けて腕を伸ばして触れようとするA。

なんていうか…ものすごく、幻覚でも見ている感じだった。

こんな小さい子が、左馬刻に懐くとは思わなかったから。


「…これから俺様の前で泣いたら、殴るからな。覚えとけ」

「ん。Aちゃなかにゃい」


ぶっきらぼうに告げ、Aの頭をぐしゃぐしゃと撫でると、Aは真剣な顔つきで頷いた。

そして、左馬刻は入間さんと一緒に車へ乗ってヨコハマに帰って行った。


「…A、左馬刻に何かされたのか?」

「うみゅ?」

「A、何を言っても怒らないから言って」

「??」


三郎と二郎がAのとこに来て問い詰めるように言う。

Aを見る限り、何か暴力を振るわれたわけではなさそうだ。


「しゃましゃ、おくちゅかってもらた!」


足をぱたぱたとすると、新しい靴に、包帯を巻かれた足が見えた。

あの左馬刻が子どもに靴を買ってあげ、手当をするなんて…


「…明日は嵐かな」

「みゅ?」

「なんでもない。ほら、もう遅いから寝るぞ」


弟たちと一緒に家の中に入り、それぞれの寝室へ向かう。

ベッドにAを座らせ、明日の準備をしてから寝床についた。

隣にAを寝かせ、毛布をかけてやる。


「おやすみ、A」

「おやしゅみ、なしゃ…」


瞼がもう閉じかけている。

おやすみ、と言ったあとに、規則正しい寝息が聞こえ、安心してから俺も静かに眠った。



――――――――――

お気に入り600人ありがとうございます。

日に日に増えていってとてもうれしいです。

これからもよろしくお願いします。

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(プロフ) - ヒプマイ沼ハマさん» 特に深い設定はつけてません。ただ、虐待を受けている影響を表せたらいいなと思いそういう喋り方にしています。 (2019年9月23日 0時) (レス) id: 3d81b48405 (このIDを非表示/違反報告)
ヒプマイ沼ハマ - うちの知り合いの子は四歳でもハキハキ喋りますけど、これはどういう設定で? (2019年9月22日 23時) (レス) id: cd1a846ab2 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 南さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。更新遅めですがお付き合いしていただけると嬉しいです! (2019年6月26日 22時) (レス) id: 3d81b48405 (このIDを非表示/違反報告)
- 夢主ちゃんがめっちゃ可愛いっすめっちゃ可愛いっす(大事なんで二回) 今から続編を読むので続編はどんな感じなのかなとワクワクしてます! これからも頑張ってください!! 長文失礼しました。 (2019年6月25日 21時) (レス) id: d0756aba1a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢花 (仮垢)さん» そう言ってもらえてめちゃくちゃうれしいです…!ありがとうございます!!ちゃんとラストは幸せにするつもりですw (2019年1月17日 21時) (レス) id: d886c652ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年9月8日 9時

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