『オーガン』side:勇者 ページ32
服を捲ると、そこには痛々しい手術の痕跡があった。
どうやら、これが痛みの原因らしい。
「こんなの、誰が...」
『おや、それが気になるかい?』
突然、脳内にそんな声が聞こえる。まだ若い青年のような声だ。
「...問おう。貴方は誰だ」
『んー。多分それは、僕が言わなくても後々分かることだから。今は『オーガン』って名乗っておこうかな』
その声は愉快そうにそう言うと、それっきり話さなくなる。
「なんなんだいったい...」
彼は自分のことを『オーガン』と呼んだ。
つまり、彼には自我が存在し、真名を隠すほどの知能はある、と。
それすらもブラフかもしれないと考えると、声の主は中々のやり手のようだ。
暫くして、圧力を感じさせる木製の扉が静かに開いた。
お姫様が帰ってきたと思った俺は、脇腹の件を聞こうとして...
「ぬ、貴様が今代の勇者か...やれやれ、国王は何を考えているのか」
──日本で言うなれば、高校生くらいの...つまり、同い年くらいの少女が現れた。
たなびくような腰まで届く長い金髪を揺らし、引き締まった肉体を見せびらかすような黒の全身タイツ。
可愛い...というより、美しいと表現したほうが最適であろう。
雪のように白い肌が、より一層彼女の儚さを引き立てていた。
「...成長した?」
「は?」
呆れたように驚く美しいその顔は、どこか『奴』を連想させる。
あと、流石に彼女はお姫様の成長した姿ではないらしい。
そも、髪色からして何もかも違うからな。
「ま、まあいい。私は『サンドラ』...ただの、サンドラだ。よろしく頼む」
「俺...いや、私はフミオ-サトウです。是非、フミオとお呼びください」
自己紹介をした彼女の顔は、どこか沈んだ表情をしているようだった。
フム、と一つ頷くと、彼女は俺を中庭に誘う。
「さあ、そうと決まれば魔法の練習だ」
「...は?」
今度は俺が驚く番だ。
突拍子のないその言葉は力強く、妙に断りづらかった。
されるがままに、王宮の庭へ向かう。
道中、彼女が「心配するな。これでも、『
仄かに赤んだ夕日が、僕と彼女を優しく照らす。
「さて、始めるか」
「...はい」
こうして、辛く厳しい魔法の練習(強制)が幕を開けた。
3人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
haru(プロフ) - 面白いです! (2021年6月30日 9時) (レス) id: 6cf492dda0 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - Noraさん» 褒めていただき光栄です!いつも女の子しか描いていないので、うまく描けるかわからなかったのです〜(汗) (2018年11月22日 19時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - 悠佳さん» 拝見させて頂きました。とても綺麗で、思わずみとれてしまう絵でした!本当にありがとうございます。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年11月22日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - こんにちは!イメ画出来たのですが、いかがでしょう? (2018年11月22日 18時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - ゆうりん@アニメ厨さん» レスが遅くなり申し訳ありません。(忘れてたなんて言えない...)作品の方、読ませて頂きました。適格なアドバイス、ありがとうございます。これから、いっそう邁進いたしますので、応援のほどをよろしくお願いします。 (2018年8月21日 12時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ