知らない顔 ページ21
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「……」
話し終えて、ちらりと神威に視線をやると、何故だか此方をじっと見つめていた。その美しい瞳に、私の何を映しているのかは知らないけれど、気になる。
ーーふと、突然神威が動いた。いつの間にか、神威の体は目の前まで移動していて。…それが、つい一昨日の事を思い起こさせた。
ーーあんな事言いやがった、テメェが悪ィ。
あの、接吻と重なる動きに、私は咄嗟に神威の体を押して、距離を取ってしまった。
奴の体がぐらりと揺れるが、持ち前の身体能力で踏みとどまった。そして、神威がゆっくりと顔を上げる。
「…っ、ごめんなさい…!!」
それを確認した私は、すぐ様体の向きを変え、出口に向かって真っ直ぐ駆け出した。
何に謝ったのかは、分からない。昨日の無神経な話題の事か、咄嗟に突き飛ばすような真似をした事か。でも、兎に角。
「(あんな悲しそうな顔、知らない)」
今の混乱している私は、神威のあの表情を見ていられず、あの場から逃げ出したくて仕方無かったのだ。
私は走った。ただただ走った。今までの、比にならないくらいの速度で。
空は、傘なんて要らない位の、曇り空だった。
「…はぁ、はぁ………本当、私の馬鹿…」
反射的に逃げ出すなんて、侍として最も恥ずべき行為だ。…と、言うより普通に神威に面目が立たない。神威が本当に、口づけをしようとしたのかも分からないのに、突き飛ばすなんて。
「…謝る事、増やしてどうすんの……」
元々気まずい空気だったのに、更に話しにくくなってしまった。神威は、話題はアレとは言え、何故だか話し掛けてくれていたのに。
何度でも言うが、人付き合いに関して私はとことんポンコツ過ぎる。異性相手だと特に。
「………こんな所に、居やがったか」
「え、」
そんな折、背後からこの場所で聞こえるはずのない声が聞こえて。
幻聴を確信しながら振り返るも、それが真実であると、認めざるを得なかった。
「…よォ、一昨日ぶりだねィ。脳筋ゴリラ」
何故なら、こんな子供みたいな悪口を言うのは、世界でたった一人しか居ないからである。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時