【◇】人気モノ×影薄オンナ－２－ (ページ33)

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Episode.69 ページ33

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「Aちゃん、顔上げてよ」

上から声が降って来たので、ゆっくりと顔を上げた。また、大きな青い瞳と目が合う。そのままその目がきゅっと細められて、成宮くんは柔らかく微笑んだ。

「俺、怒ってないよ。俺はただ、Aちゃんに会いたかっただけだから」

「でもっ…」

反論しようとすると、成宮くんの人差し指が伸びてきて唇を抑えられた。ふに、と直に触れられている感触がして顔に熱が集まる。

唇が、熱い。

「Aちゃんの話がそれなら、俺の話も聞いて欲しい」

成宮くんのいつになく真剣な様子と、触れられていることに対する驚きと焦りで私は頷くしかない。すると数秒後、成宮くんの指はそっと離れて行った。熱くて熱くて離してほしいと思っていたのに名残惜しく感じてしまう。

「俺はね…Aちゃんのこと好きだよ。ずっと、ずっと」

成宮くんは今度は歯を見せてははっ、と笑う。それから「…なんて、もう一度会えたら、どうしても言いたかった。もう何度も拒否されてる癖にさー」と自嘲気味に言った。

それで、成宮くんからひたすら逃げ回っていたあの頃を思い出す。あの頃は、本当に嫌だった。成宮くんが私の事好きなんてそれ自体まず信じられなかった。

…でも、今は違う。

自分から離れる道を選んだにも関わらず、頭の中は成宮くんのことでいっぱい。片時も忘れた事なんてなくて。

「それじゃあね！また会えて、ホントに嬉しかった」

去っていってしまおうとする成宮くんの腕を、しっかりと掴んだ。そしてーーー

「私も、…好き。成宮くんのこと」

いつも真っすぐに気持ちを伝えてくれたせめてもの御礼として、私も彼の目をまっすぐに見つめて伝えた。