Episode.67 ページ31
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「…稲実ベンチが騒がしいわね」
「確かに、伝令が行ってますね」
試合は展開し、2−0で青道がリードしていた。青道の投手は1年生の降谷くんという子らしい。素人目にもわかるくらいの速球剛球でびっくりした。
そこで稲実がブルペンに伝令。何となくこの後の動きは予想がつく。
「ピッチャー交代、成宮鳴」
稲実の監督さんがベンチの方から言った。途端、青道側のベンチに緊張が走った、ように見えた。成宮くんは私が見た事ないくらい真剣な表情をしてる。
ちらりと成宮くんがこちらを見て、目が合った。真っすぐに青い瞳に見つめられて、今度は逸らせなかった。成宮くんが一瞬だけ微笑み、またすぐに元の顔に戻った。
…やっぱり、彼は魅力的な人だ。私なんかには釣り合わないくらい。そんな事は前から分かってたはずなんだけど、実際に見ると想像よりも遥かに凄い人なんだなと思う。
「今、成宮くんAちゃんのこと見てたね」
「…気のせいですよ」
なんて、誤魔化し切れてないのは私が一番よく分かってる。
成宮くんの投球練習も終わって、試合再開。スパァーン、と気持ちのいい音が響く。成宮くんの投げた球が綺麗にミットに収まった。
「ストライーク!」
青道打線の勢いが、急に衰えた。出塁どころか、バットに当てる事すらままならない。マウンドの上の成宮くんからは青白いオーラが垣間見える。それが冷ややかな風に感じられて、少しだけゾクッとした。
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2017年6月3日 20時