Episode.58 ページ22
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とりあえず、御幸くんは黙っていてくれるみたいだし、良かった。叔母さんを困らせる訳には行かないから。私が我慢さえすれば、大丈夫なんだから。
そう、思ってたのにーーー…
「ど、どうして此処に…」
帰宅しようとした私の前に現れたのは、正門の所にもたれ掛かっている白河くん。私の姿を捉えると、こちらに歩いてくる。
「…安心しなよ。まだ成宮には教えてないから」
「……そう」
最悪の事態にはなってはいないらしい。「今日は、」と白河くんが切り出した。
「俺個人で、聞いてみたい事があったから来た。時間、取れる?」
「…いいよ。喫茶店でも、入ろう」
このまま帰ってもらったら、私の方が困る。なぜ、ここが分かったのか。なぜ、一人で来たのか。…成宮くんは今どうしているのか。
聞きたいことが、多すぎる。
***
青道から適当に歩いて、そんなに離れていない喫茶店に入った。
青道と稲実。学校同士の距離がそれなりにあるとはいえ、誰かに遭遇しないとも限らない。白河くんが来ているのだから今日は練習もないのだろうし。
お互い、飲み物を注文してから早速本題に入る。
「どうしてここが?」
「書類をチラッと盗み見ただけ。確証は無かった」
「ずっとあそこで待ってるつもりだったの?」
「ある程度したら帰るつもりだった。今のアンタがこの学校に遅くまで執着する意味がないから」
…私の行動は、見透かされてたということか。さすが白河くんとしか言いようがない。
私は次の質問をしてみた。
「じゃあ、どうしてすぐに成宮くんに伝えなかったの?」
「伝えて欲しかったの?それとも、彼奴がお前をそんなに必死になって探してるとでも?」
「まさか…!御幸くんって分かるでしょ?彼に、荒れてたって聞いたから」
思わず大きな声になってしまう。まあ私の存在なんてうっすいものだから、注目なんてされないけれど。
すると白河くんは「ちっ」と舌打ち。そして何やら口の中でもごもごと呟いていた。
「ふーん。まあいいや。それで?今度はこっちの番だよね。アンタさ、何で何にも言わなかったの?いや…その前に何で転校したの?」
一番答えたくない質問が来てしまった。
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2017年6月3日 20時