Episode.56 ページ20
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「それで何ですか?えっと…」
「ああ、俺は御幸一也だ。よろしく」
「はあ…」
ここは青道高校の屋上。
人目のないところを選ぶ辺り、どんな話なのか余計に気になる。
「それでさ…お前、鳴と仲良いんじゃないか?」
「鳴…?」
聞きなれない単語。
だけど、すぐに思い当たる人物がいた。
「もしかして…成宮くんのこと、ですか?」
「ああ」と頷く御幸くん。ずっと苗字で呼んでいたから忘れていた。
御幸くんが名前で呼んでいる辺り、親しいのだろう。
「いや、さ…前に鳴会ったとき、今気になってる奴がいるって言ってたんだよ。その名前が確かAだった気がするなって」
「それで…それが私なんじゃないかってことですか?」
「…まあな」
御幸くんはちょっと笑った。…なんて答えよう。
普通に、答えればいいかな。
「…うん。多分あってると思う」
Aって名前の子は私以外にはいなかったはずだ。
『気になってる奴』とかその辺りは知らないけど。
「それが…どうかしたんですか?」
「鳴に、何も言ってないとかじゃないよな?」
「え…?」
いきなり図星を突かれて、と言うかなぜそんな事を聞くのか私にはわからなかった。
御幸くんとは初対面なのに。
「昨日、メールしたらちょっと荒れてたみたいだったし、転校生なんて急だったから」
私の弄るような目線に気がついてか、御幸くんは付け足した。
…荒れてた、か。
成宮くんは辺り構わず怒鳴り散らすような性格の人じゃない。
原因はきっと私なのだ。
「御幸くんの言う通り、です…。黙って来ました。何も言わなかった。……でも、成宮くんには何も言わないで。お願いします…!」
今会ったら、私は戻りたくなってしまう。
私は、成宮くんから余計に離れられなくなってしまう。
そんなことになったら、伯母さんに迷惑をかけてしまうのだから。
もし、もう一度会えるなら、ほとぼりが冷めてからがいい。
「…わかったよ。俺は気になって聞いただけだから」
御幸くんは頷いてくれた。
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2017年6月3日 20時