Episode.53 ページ17
・
突如、電話が掛かってきた。
「はい、もしもし」
「Aちゃん?」
「叔母さん…」
電話の相手は叔母だ。嫌な予感しかしない。こういう時に限ってこんな予感はよく当たる。
「あのね、離婚が決まったわ。Aちゃんはうちで預かれるよう説得しておいたから。荷物をまとめておきなさい。明日の朝、迎えに行くわ」
「……はい。ありがとうございます」
「学校にも連絡しておくからね。それじゃ」
…大丈夫。叔母の家も東京だし、ちょっと学校が遠くなるだけ。
そう思いながら布団に入ったけど、嫌な予感はまだ消えなくて、全然眠れなかった。
***
成宮
Aちゃんの家を訪れた次の日。彼女は学校には来なかった。先生に聞いても理由はよく分からないらしい。ただ学校に連絡は来てるから心配は要らない、だって。
そんなの、心配するに決まってる。家、見にいってみよう。
「……何だこれ」
Aちゃんが昨日まで住んでいたはずで、俺もいたはずのその家は、表札が剥がされて人の気配がまるでなかった。最初から誰も住んでなかったみたいに。
おかしい。いくら何でもおかしすぎる。
「あの、すみません」
「ん?どうしたの?」
「この家の人って…?」
「ああ、私も詳しいことは知らないんだけど夫婦が離婚して出ていって、娘さんも何処かに引き取られたみたいよ」
「引き取られたって…誰にですか?」
「さあ?そこまでは…あ、ちょっと!!」
隣人にお礼を言う間も無く走り出した。俺の頭の中にぐるぐると回っているのは『離婚』という文字。
昨日、「可能性は低い」なんて言ってたのは嘘だったんだ。本当はギリギリだった。
「Aちゃんが行きそうな場所、なんて心当たりないじゃん。俺、Aちゃんの事、何も知らない…」
どうすることも出来ないまま、明日は学校に来てくれることを願うしかなかった。
85人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2017年6月3日 20時