Episode.49 ページ12
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「結婚したての頃は分かりませんが、少なくとも私が物心ついた時には夫婦仲はあまり良くありませんでした。
面と向かって喧嘩するというのならまだマシですが、冷めきっているというか基本的に会話が無く他人行儀です」
「Aちゃんは何か言われたりとかは…?」
不安げに瞳を揺らす成宮くんに私は首を横に振る。
「暴力とか、暴言とかそう言ったものをされたことは一度もありません。……だって、他人ですから。
私たちはほとんど他人同然なんです。だから料理も出来なくちゃいけないし、年上だから敬語も良く使う」
…そう、偶に家族三人揃ったとしてもそこに会話はあまり無くて食事を共にすることもない。
さすがに今から「お風呂に入る」とかは声をかけるけどそれだけ。
本当に必要最低限だ。
「こんなこと、俺が言っていいのか分かんないんだけど……離婚、とかは無いの?」
「恐らく、ありません。ただ、夫婦でいるだけでお互いにメリットがあるからです。
二人とも家系がそれぞれの業界で名の馳せたビジネスマンなんです。
彼らは一般人との結婚は親に反対されるみたいで。
…なら、まだ気のあるお金持ちと、というのがあの人たちの考えでしょう」
この時代にそんな古臭いことを?
と、思うかもしれない。
私も親戚の叔母からこの話を聞いた時は信じられなかった。
でも、それを通せば色々な事に納得がいった。
「……つまり、お互い本当に結婚したい相手がいるけど、親を黙らせるために結婚してるって事?」
「成宮くんは…優しいんですね」
会ったこともない見ず知らずの人間をそこまで良く言えるなんて。
あの人たちの中にそんな綺麗な感情があるわけがない。
そもそも、愛するという事すら何なのか分かっていないだろうに。
私も、人のことを言えたたちではないけれど。
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2017年6月3日 20時