Victory ページ28
Ohtani side
夏はあっという間に過ぎた。気づけば木々は色づき肌に触れる空気は焼け付く暑さを失っている。もうすぐ冬がやってくる。まるで全部夢だったみたいだ。
今年の初夏。
俺は恋をしていた。ほんの数か月で俺の心の全部は彼女のものになったのに。
ジェットコースターで心の底から笑ったあの日。
毎週隣に座る眠そうなAを見ながら授業を受けた一か月。
お昼ご飯を毎回おいしそうに法バル笑顔も全部大切な思い出だった。
スケートを滑る彼女の指先
美しいシルエット
全部俺だけの宝物、なはずなのに。
*
『なん…で、』
「翔平さんは気遣いの人だから、復帰してからも私に連絡してくれたりすると思います。でも、大切なシーズン中の翔平さんの心を乱したくありません。」
*
そう言って俺の前から去っていったあの子。
本当に連絡してくれなかった。最初は気遣いに見えて、Aは俺から逃げたような気がした。
境界線を彷徨って、そして越えようとしていた俺に気づいて、怖気づいたんじゃないかって悔しくもあった。だから俺も、連絡しなかった。
でも時間がたつにつれ俺の脳は彼女のことばかりだ。
本当は、Aは何か我慢していたんじゃないのか?どうしてもっとしっかり見ていてあげなかったんだろう。彼女にも言いたいことがあったかもしれないのに。子供なのはどっちだろう。
早く終わらせて、会いに行かなきゃ。
『連絡しなくても結局心、乱されまくりだよA。』
今日バッテリーを組んだ心知れたキャッチャーがスライダーのサインを出した。
首を振る。
これでストライクを取れれば、チームは優勝だ。見ててねA、俺一番とって見せるから。
ストレートのサインだ。
首を縦に振った。ベンチを見れば一平さんもこくり、とうなずく。
いつも以上に間をとり、渾身の力を込めてボールを放った。手ごたえはある。外角に上手く入るはずだ。
パシッ!!!
「ストーーーーライク!!」
『っっっっしゃあああああああああ!』
うわああああああ!
球場中に歓声が広がった。
チームメイトが全速力で駆けてくる。次の瞬間には俺は水やらスポドリやらでびしょびしょだった。
やった、俺、やったよA。
ねえ、見てる?どこにいるの。すぐ迎えに行くから。お願いだから、
もうどこにも行かないで。
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みび - 続きが気になります! (9月8日 23時) (レス) id: 4e8c4ab155 (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - miya381117さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (6月4日 16時) (レス) @page30 id: dfa5704a4e (このIDを非表示/違反報告)
miya381117(プロフ) - 続きが気になりすぎて眠れない^ ^翔平行けー! (6月1日 21時) (レス) @page29 id: e8bd8eef5b (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - 桐山めぐさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごくうれしいです!!投稿頑張ります! (6月1日 17時) (レス) @page29 id: dfa5704a4e (このIDを非表示/違反報告)
桐山めぐ(プロフ) - こんにちは!このお話めちゃくちゃ面白いです♪大谷さん 主人公ちゃんに連絡出来ない日々を耐えてやっと会えると思ったのに、、主人公ちゃんに何もありませんように祈ります(T_T)続きも楽しみにしてます!応援してます♪♪ (6月1日 17時) (レス) @page29 id: bb3023c008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るう | 作成日時:2023年5月26日 15時