結城(兄） ページ6
＊
「ん？結城がどうかしたのか？春っち？」
栄純君が春市君に聞くと春市は「ねぇ、栄純君。結城って何処かで聞いたことない？」と聞いていた。
まぁ、聞いたことはあるだろう。野球部には私の兄も居るわけだし。…聞いたこと無い方がどうにかしてるよ、それ。
「…沢村、こんなところにいたのか。御幸が探してた……市春？」
「兄貴」
「あ、哲じゃん」
「まだ帰ってなかったのか」と私の方によってくる兄貴こと結城哲也。因みに私の発言を聞いて春市君と栄純君は「兄貴！？」と驚いていた。
「驚く程でもないでしょ。ほら、哲にカツラ被せたらこんなにそっくり」
そう言って介さんはどこからかカツラを出して兄貴に被せる。兄貴は天然だから、そんな事には突っ込まなくて「似合ってるか？」と介さんに聞いていた。
相変わらず兄貴、順応性が高い。少しぐらいは驚いた方がいいと思う。
「うおぉぉ！！本当だ！！リーダーにそっくり！」
「えっ、そんなに似てる？なんかちょっと嬉しい……」
栄純君に「似てる、似てる」って誉められるものだからついつい頬を赤く染めしまう。嬉しい、幸せです。
「それにしても栄純君と結城さんは顔見知りなの？あったときなんか驚いてたけど」
「そう言えばそうだったね」
春市君の言葉を聞いてジーと見てくる兄貴と介さん。顔見知り、って程でも無いんだけど…。
「結構最初の頃に一回だけ。栄純君が転がしてきたボールを投げた事があってね。結構本気で…」
私の言いかけ途中にも関わらず「あれ、凄かったッス！」と私の両手を握りしめて高分子気味の栄純君。兄貴と介さん両方からチョップを貰って痛そう。
「片岡監督がいるなら挨拶しに行こうかな。久々に監督直々の千本ノック受けたいんだけど、頼めばやってくれると思う？」
私が兄貴に聞くと返答したのは兄貴じゃなくて介さんだった。
「監督の千本ノック受けたい、なんてつくづく変わった思考してるよね」
「そー言う返答は待ってません！」
私が介さんに怒っていると兄貴が「監督は忙しい身だ。休みの日なら頼めばきっとやってくれる」と言った。
……野球部に休みの日、なんて有りましたっけ？
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