私提案 ページ34
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監督の集合の声で選手そしてマネージャー全員が監督の目の前に集まる。監督の黒いグラサンが日光に反射する。その姿はまるで犯罪者のようで何人か息を呑んでいた。
「今回の夏合宿は二回に渡ってやる」
監督のその言葉に三年生、そして二年生は悲鳴にもならない声をあげる。それだけ夏合宿はきつい、と言うことだ。
「提案者は市春だ」
皆の視線、殺気等々が私の体を突き抜けていくように感じる。既に私、死んでない?亡き者になってたりしないよね?
「一回目の夏合宿、場所は海」
「うぉおお!!春っち、海だってよ!!」
「え、栄純君五月蝿い!ちょっと黙ってて!」
海、と聞いた瞬間栄純君が大声で騒ぎ、私に集まっていた視線全てが栄純君の方へと向かった。
大声で名前を言われた春市君は慌てて栄純の暴走を止めようとしている。春市君はある意味、栄純君のお世話係のような感じ。
あまりにも栄純君が五月蝿いので監督のグラサンがギランと光る。そして重々しく監督は口を開けた。
「沢村、黙れ」
「イエスボス!!」
見事な敬礼を披露した栄純君。はっきり言ってそんなのは求めてはいないと思う。
「浜辺は肉体強化するにはもってこいの場所だ。だから今回は市春の提案を呑んだ」
監督がそう言うと兄貴の声がした。「監督」と。
「どうした、結城」
「海とは一体どこで?わざわざ俺達の為に貸し切りなんて出来ない筈…」
「叔母が無人島を持っていてな。今回はそこを借りるつもりだ」
「「(監督の家って……)」」
え?軽々しくそんな事言える監督って実は凄いお金持ちだったりするわけ?当たり前のように無人島借りるって言ったよ?この人。やばすぎでしょ!
「一回目、海は三日間。と言っても練習は最初の二日間だけだ。最後の一日は頑張ったお前達にご褒美として一日自由時間をやろう」
監督のその言葉を聞いて皆が「うぉおお!!」と雄叫びをあげる。
「その代わり、死ぬ気でやれ」
「「はいっ!!」」
この夏、団結力が更に高まりそうです。
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