紳士 ページ11
*
ヨロヨロと私は重いプリントとミニ黒板を持って歩いていた。
どうして今、こうなっているのか。全ては数学の教師
野球部に遅い入部届けを出すため、片岡監督のいる職員室に私は行った。片岡監督とは難なく会えて入部届けも出せた。そのまま教室に帰ろうとしたときだった。
「結城。確か、君のクラス次、私の授業だったよね?」
ハゲに引き留められ「そうですけど……」と言うと「ならこれいっぺんに持っていって」と数十枚のプリント、そして次の授業で使うであろうミニ黒板を渡された。
「一人でいっぺんには無理です」そう断ろうとしたけど既に遅かったのかハゲの姿は見えなくなっていてやむ終えなく一人で持っていくことになってしまった。
片岡監督は困っている私の姿を見て「手伝うぞ」と言ってくれたが、違う先生に呼ばれ忙しそうにしていたので丁寧に断った。
あのハゲとは違って片岡監督は優しい。取り敢えずハゲ、死ね。
右手に数十枚のプリントを左手にミニ黒板を持ち、ヨロヨロと歩く。少しでもバランスを崩してしまったら終わりだと思う。きっとプリントの山が雪崩を起こすだろう。
職員室から一年生の教室までは遠い。それがまた厄介だ。…そもそも何でこれを一度に持っていかないといけないんだよ。自分で持っていきやがれ。
怒る、と言う行為を滅多にしない私が怒っているのはかなり珍しいことである。一気にハゲのことが嫌いになった。まぁ、元からそんなに好きじゃなかったけど。
内心怒りながらもヨロヨロと歩いていると一気に軽くなった。右手に持っていたプリント全てが消えたのだ。ん?と横を見ると桃色の髪の毛が見える。
「この数学のプリント、うちの教室まで持っていけばいいの?」
「春市君…!!」
ニコリとプリントを全部持ってくれる春市君。ヤバい、春市君が仏に見える。ついつい拝んでしまう私を許してくれ!
「…何で拝んでるの……」
私の行動にちょっと引きながらも、春市君は「
ミニ黒板はそんなに大きい感じでもないし、重さもないので「大丈夫」と私は言う。春市君は「そっか」と微笑んで私のペースにあわせてゆっくりと歩いてくれる。
「ヨロヨロ歩いてる人見つけたから、誰だろうって思ってたらまさかの結城さんでびっくりしちゃった」
そう言いながらも助けてくれる春市君は紳士だ。お兄さんとは大違い。
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