検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:21,460 hit

紳士 ページ11



ヨロヨロと私は重いプリントとミニ黒板を持って歩いていた。

どうして今、こうなっているのか。全ては数学の教師葉佳(はけ)(ニックネームはハゲ)のせいだった。

野球部に遅い入部届けを出すため、片岡監督のいる職員室に私は行った。片岡監督とは難なく会えて入部届けも出せた。そのまま教室に帰ろうとしたときだった。


「結城。確か、君のクラス次、私の授業だったよね?」


ハゲに引き留められ「そうですけど……」と言うと「ならこれいっぺんに持っていって」と数十枚のプリント、そして次の授業で使うであろうミニ黒板を渡された。

「一人でいっぺんには無理です」そう断ろうとしたけど既に遅かったのかハゲの姿は見えなくなっていてやむ終えなく一人で持っていくことになってしまった。

片岡監督は困っている私の姿を見て「手伝うぞ」と言ってくれたが、違う先生に呼ばれ忙しそうにしていたので丁寧に断った。

あのハゲとは違って片岡監督は優しい。取り敢えずハゲ、死ね。

右手に数十枚のプリントを左手にミニ黒板を持ち、ヨロヨロと歩く。少しでもバランスを崩してしまったら終わりだと思う。きっとプリントの山が雪崩を起こすだろう。

職員室から一年生の教室までは遠い。それがまた厄介だ。…そもそも何でこれを一度に持っていかないといけないんだよ。自分で持っていきやがれ。

怒る、と言う行為を滅多にしない私が怒っているのはかなり珍しいことである。一気にハゲのことが嫌いになった。まぁ、元からそんなに好きじゃなかったけど。

内心怒りながらもヨロヨロと歩いていると一気に軽くなった。右手に持っていたプリント全てが消えたのだ。ん?と横を見ると桃色の髪の毛が見える。


「この数学のプリント、うちの教室まで持っていけばいいの?」

「春市君…!!」


ニコリとプリントを全部持ってくれる春市君。ヤバい、春市君が仏に見える。ついつい拝んでしまう私を許してくれ!


「…何で拝んでるの……」


私の行動にちょっと引きながらも、春市君は「ミニ黒板(そっち)重くない?変わろうか?」と聞いてくれる。

ミニ黒板はそんなに大きい感じでもないし、重さもないので「大丈夫」と私は言う。春市君は「そっか」と微笑んで私のペースにあわせてゆっくりと歩いてくれる。


「ヨロヨロ歩いてる人見つけたから、誰だろうって思ってたらまさかの結城さんでびっくりしちゃった」


そう言いながらも助けてくれる春市君は紳士だ。お兄さんとは大違い。

友達→←随分



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
設定タグ:ダイヤのA , 小湊春市
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:フ瑠ラン | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年7月2日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。