【歌い手】きみと100このあまいもの。【短編集】

▼そーだあいす/そう ページ17

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「 あっちぃね。 」
「 あっちいですね、そうさん。 」


防波堤に座り込んで２人で足をぶらぶらする。

夏の光で少し暑くなったコンクリートの上に乗せられた２つの手は、確かに繋がってて。

隣の彼女は真っ赤になったうみと、沈んでいくたいようをぼんやりと眺めてる。




「 アイス、溶けちゃうね。ほら、Aの 」

「 んは、ほんとだ。垂れてきてる！ 」



ぽたぽたと彼女の太ももに落ちる青い液体。


ソーダアイスが溶けてる証拠。
早く食べないと、溶けて

形も、跡形もなく。


そうだな、なにもなくなっちゃうよ。





「 そうちゃん。たべて 」

「 ん、あいよ 」



口に突っ込まれた食べかけのアイスをもしゃもしゃって食べる。
溶けかけだから、口に入れただけでほぼ水になる。

馬鹿だな、ほんとに。

ばかだな。




「 このまま死んでさ 」
「 うん。 」

「 死体解剖されたらさ 」
「 うん。 」


「 最後に食べたものがアイスだってわかるのかな。 」

「 しかもソーダ味って、わかるかな？ 」
「 どうだろ。 」



彼女の問いに、一句一句間違えないように返す。
まちがえてもわかんないし、誰も怒らないけど。

僕が、後悔するかもしれないから。




「 さっきさ、お菓子も食べたよね 」
「 ぜーーんぶソーダ味。 」

「 ソーダ飽きたよ。 」
「 そりゃひでぇや。 」



” Sou ” だから、ソーダ。

彼女はやけにそれに執着してて、僕にもめっちゃソーダ味食べさせてくるの。
僕は、ソーダはそこまで好きじゃない。




「 ばかだなーって、思われるのかな。最後の晩餐がお菓子なんて 」
「 思われるかもね。 」

「 これから私たち、死ぬんだね 」

「 そうだね。Sou、だけに 」

「 面白くない 」
「 うるさ 」



だって、君を苦しめるのがソーダだから。
Souだから、爽だから。

ぼく、だから。


いやまぁ、関係ないと言われたらないけれど。
申し訳ないよね。


だからせめて最後まで、一緒にいるよって約束。
それくらいは守らせて欲しいんだもん。








「 この海が全部、ぜーんぶ。ソーダだったらいいのにね。 」


「 Souだけにー？ 」
「 Souかーい！なんちゃって。」

「 あはは、ありがと。じゃ、そろそろいこっか。 」



「 うん、そうだね。 」




最後の我儘。

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