【歌い手】きみと100このあまいもの。【短編集】

▼ちぇりー/たちばなゆう ページ12

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「おい、チェリーボーイ。」
「なんだとこの野郎刺すぞ。」

「うわこわっ、」


こうやって俺をからかってくるこいつは、幼馴染のA
幼馴染だからって言っていつも俺の家に入り浸ってる。


「おーいー、録音するから出てってくれへん？」
「えー、聞いてたらダメですか〜」
「無理。」
「ええ、良いやないですか人気歌い手の橘優さん、」
「どついたろか」


とまぁ重度のかまちょ、

俺も俺で、此奴には素直になれず１２年
想いを伝えられずいる。

いやだって俺ヘタレやん、
べだみたいにカッコよくないし、ゆーらんくんみたいに良いこと言えないし
... ほんと、振られる気しかしない



「あ、せや。ままゆがな、さくらんぼ食べてええってさっき持ってきてくれてん、」
「お、食うかぁ。腹が減っては録音はできぬ」

「ふふ、せやな！」


... なんかようわからんままゆの気遣いやな
でも正直別のフルーツにして欲しかった俺にチェリーボーイ言いたいんかはっ倒すで。


「うまー！あまー！！！」
「子供か、」

きゃんきゃん騒ぐAに俺がつっこむと、急に静かになって


「なぁばなゆ、私な大人になりたくないよ。子供のままでいたい」

って、言った。



「... なんで？俺は早う大人になりたい。それで、べだおとかみんなに追い付きたいよ。
今はせいぜい食らいつくのが精一杯やから、」

「そか ... せやね、うん。」


彼奴は顔を伏せて手を強く握った。



「あんな、俺が大人になって人気歌い手！ってなったらワンマンやるから。
そしたら、一番前の席のチケットお前にやる！
絶対来いよ？
きらきらした、さいっこうの世界をお前に魅せてやるから！！！」


俺はそう言って、手を広げて精一杯笑った。
彼奴は笑って頷いてくれた、

よかった。





「... なぁ、A？急でごめんやけど、好きやで。」
「！？」


なぜか今、するりと言葉が口から出て、
そんで俺は、彼奴に有無を言わさずキスした。

断られるのが怖かったんだとおもう、
ファーストキスは、さっき食べたチェリーの味がして。
すごくすごく、甘くて______。


離れた時嬉しそうに泣きながら微笑んでくれた彼奴の大人っぽい顔を俺が忘れることは無い。









... 俺が街を去ったのは、次の日の事だった。

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