真実と、その果てに (ページ12)

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見知った廃墟で８ページ12

「ねぇ…良かったら何があったか、聞かせてもらえるかな？」

そう聞いた時、クロームちゃんの瞳が揺れた気がした。

さっき見た黒曜生の事からも明らかだけど、普通じゃない何事かが起こってるのは確かだ。
問題はそれが何かだ。悪女か、単体又はヒロイン嫌われか、ヒロイン悪女転身系か。
とにかく、クロームちゃんに話を聞かない事には何もわからない。

よく考えなくても、突然現れた怪しい奴に「何があったのか」と聞かれても誰も答えないだろう。
私だってこんな状況で出てきた奴なんか、怪しすぎてノータイムで思考停止して逃げるね。

考えが足りなかった。話を聞くためにも、自分が何者なのかを知っている前提で話さないと
何で私のこと知ってるの？ってなっちゃうだろうし、自己紹介から始めればなんとか…

「…そうだね、まず自己紹介から始めようか
私の名前は神河紗希。君の名前は？」

「…クローム、クローム髑髏。」

まだ顔は俯いたままだが、瞳をこちらに向けて小さく答えてくれた。
曇る表情に落ちる影が、状態の深刻さを感じさせる。

…でも、まだ光はある。どんな環境にどれくらいの時間置かれてたのかはわからないけど
まだチャンスはあるはずだ。少し近づいて、そっと肩に手を乗せると明らかに体がこわばる
振り払えないほどに精神が疲弊しているのだろう。

「クロームちゃん。信じられないなら、信じなくても大丈夫だから…話してみて？」

安心させるように一言一言、ゆっくりと。
いくら時間がかかってもいい、どうせこの調子じゃあ誰もここには来ないだろうし。

「あ…の、……」

震える唇で何かを言いかけはするものの、また同じように目を伏せ、口を結んでしまう。
こんなになるまで、クロームちゃんは耐えていたのだろうか。だがそれを誰一人として救おうとはしなかった。

…誰一人として。というのは現状を知らない私の誇張かもしれないが、そういう事だろう？
知らない人に関係ないからと強がりもせず口を開きかけたって事は、限界の一歩手前だ。
この場に救う誰かがいないなら、危険だろうが何だろうが私に代わりができるものなら一緒にいてやりたい。

いや、そうしなければ壊れてしまいそうな程にか細い。
彼女がいなければ、というか、一人だって欠ければ世界は綺麗には廻ってくれないのだ。
大事で、尊い存在なのよ？全員。私達側からすればよくよくわかる事だけど。