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「買い物があるんだ。次は行こうと思ってるから、またそのとき声かけてよ」
そう言って笑いかければ彼女は少し耳を赤くしながら自分たちのテーブルへと戻って行った。嘘をつく罪悪感よりも、Aヌナと一緒に居られる幸福感を優先させるのは、もはや俺にとって当たり前のことになっている。
この後も実は友人たちに「どうせ彼女が看病に来てくれたんだろ」となじられるものの、また俺は誤魔化して「相手に移しそうだったから1人だった」と苦笑いした。そもそもの風邪の原因が、俺が引き起こした喧嘩だっただなんて、口が裂けても言えない。
大学から出て電車を待ちながら、トーク画面を開く。
周囲に友人たちがいないことを確認してからメッセージに「今日夜、行きます」と短く送った。謝らなくちゃいけない。なんだ今更こいつって思われるかもしれないし、相手にしてもらえないかもしれないけどやっぱり俺は、絶対にヌナを諦められないとこの数日実感した。
あんなにも遠くヌナを感じたのは初めてで、熱にうなされている間どれだけヌナに会いたかったか知って欲しい。いや、それよりも俺にはAヌナが必要で、Aヌナにも俺を必要だと感じてほしい。
家に一度帰って、ヌナのオフィスに行くか自宅に行くか迷った。オフィスの前で待ち伏せするか、マンションのエントランス前で待つか。どちらにせよまあまあ不審者だけど、鍵を持ってない俺はこうするしかない。先ほど送ったメッセージには既読はついているものの、返信は来ていないし。
もし、俺がヌナと同い年なら、迷わずオフィスまでヌナを迎えに行くだろう。お疲れ様って声をかけながら、一緒にオフィスを出てきた男に牽制の意を込めて微笑んでやる。
…わかっている、そんなもの夢物語だ。
未だ返信の来ないスマホを握りしめたまま、俺はヌナのマンションへと向かった。
「…来ない」
21時半。普通なら残業があったとしてもこの時間くらいには姿を見せることが多いのに、今日に限ってその気配はまったくない。もうそろそろ夜遅いし、電話してもいいだろうか。ああでも、もしまだ残業していて会社の人が近くに居たら…
うだうだと悩んだ挙句、22時頃にようやく電話をかけた。
1コール、2コール、3コール…
ヌナ、早く出て。
俺はヌナに直接言わなきゃいけないことがあるんです。スマホを握りしめる手が段々と焦りで湿っていく感覚がした。
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マリン(プロフ) - ころころまんさん» ジェミンを応援したくなるというコメント本当に嬉しいです。最後まで主人公の味方になろうとする彼を書きたかったので……！コメントありがとうございました！ (2021年3月21日 12時) (
レス) id: 2096d89c8f (このIDを非表示/違反報告)
ころころまん(プロフ) - ジェミンの話が一番面白かったです。ドキドキするしジェミンを応援したくなるし、ジェミンっていいやつなんだなぁと私は感じました。また更新お待ちしています。こだわりのある感じがまた最高です。 (2021年3月21日 4時) (レス) id: ddd6b54eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マリン | 作成日時：2021年2月15日 1時
