第10話（律）律視点 ページ10
【三枝律】
「律ちゃん・・・本当に大丈夫なの？まだ、此処にいてもいいのよ？」
私の担当の看護師、天野さんが優しい口調で告げる。
「ううん。気持ちは嬉しいねんけど、やっぱりここにはおられへん。
天野さん、私だけに手ェ回しとったら他の子たちはどうすんねん。きっと、皆寂しいと思うで？
それに、もう中学生やで？大丈夫や！アパートも決まっとるし！」
ニヒッと笑い、左手でブイサインを作る。
紫色のシュ
ーズを履いて、ロードバイクにまたがる。
「律ちゃん、これ。」
天野さんが差し出したのは、地図と5000円札だ。
「少ないけど少しは役に立つやろうから、もっときなさい。」
私の手を引っ張り、それを手のひらに乗せる。
「ちょ、こんなん持っていけへんよ！」
慌てて返そうと、
「持って行って。お願い。」
・・・天野さんにこんな事言われたら、返せるわけないじゃんか。
赤ちゃんポストに入れられ、親に捨てられた私を、ここまで育ててくれた天野さん。
「分かった、ありがとう。
・・・ほんなら、行くわ。今まで、ぎょうさんお世話になりました。」
ペダルに足を掛け、体重を掛ける。
後ろで、天野さんが手を振っていくれているのが分かる。
あぁ、鼻の頭がツンとする。目から涙があふれる。
「っう、っくぅ・・・ｽﾞﾋﾞｯ」
私は、泣きながらペダルを踏み続けた。
「結構近くまで来たな・・・。
うーん・・・・どう行けばいんだろ・・・。」
一応、アパートの近くまで来たのは分かる。
近くに、花畑があるとあったから、あと少しなんだろうけど・・・・
「迷った・・・。」
どうしよう、と腕時計に目をやる。
「うっそ！もう6時なん！？」
空を見上げると、綺麗なオレンジ色に染まっていた。
「・・・綺麗やなぁ。」
綺麗、と思うと同時に、この綺麗な夕焼けを壊したいと思う。
綺麗なもの程、壊れる時も綺麗だから。
人だって同じだ。
死ぬ瞬間が一番美しい、と私は思う。
1度、トラックに轢かれた女性を見た事がある。
トラックが横断歩道に突っ込んできて、女性が轢かれた一部始終を目にした時、
飛び散った血液を「綺麗」と思った。思てしまった。
まるで、倒れた女性の周りに花が咲くかのように見えたのだ。
「あ・・・駄目やん。こんな事考えとったらあかんわ。」
一人、赤々と染まった夕日を見ながら呟いた。
「こんな事考えとらんで、はよいこ。」
私は、再びペダルを踏み始めた。
これからの生活に胸を膨らませながら。
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ライガット@絶賛片思い中(プロフ) - 愛李さん» あ、愛ちゃん、来たんだーｗありがとねー！ (2015年6月30日 19時) (
レス) id: a5107bee30 (このIDを非表示/違反報告)
プリン☆(プロフ) - 愛李さん» ありがとうございます！これからもよろしくお願いします！ (2015年6月28日 11時) (レス) id: 46806ae94a (このIDを非表示/違反報告)
愛李 - 凄く面白いです！更新楽しみにしてます! (2015年6月22日 18時) (レス) id: 199e8597dc (このIDを非表示/違反報告)
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