フェチズム達が集まるアパート！【小説】

第38話　　（律）律視点 ページ38

体をくねらせ、大きく背伸びする。

私が小さい頃から使っていた、自転車の「deroza」。

私のお気に入りは、ハートのロゴが入っている所だ。

derozaにまたがり、ペダルに足をセットする。

あぁ、この感じだ。

あの日、あのレースの時の緊張感。たまらない。

ヘルメットをかぶり、走り出す。

最初は、ゆっくり。

少しずつスピードを上げていく。

今日の目的は、クライム(自転車での山登り的なもの)だ。

山が苦手なスプリンター(平坦のコースが得意な選手)の私は、

何とか山を克服したいと思う。

クライムで、ファーストリザルト(山での、一番最初のゴール)を獲った時の感情は、

気持ちはどんなものなんやろう。




「楽しみや。」




自然と、口角が上がる。

来年・・・いや、再来年。

私は高校生になる。高校生になったら、今までより、もっと多くのレースが出来る。

インターハイに、スプリントレース、激坂ヒルクライム・・・・。

あぁ・・・・！！！早く、速く、ハヤク！！！


こんなんじゃだめだ。もっと、もっと！

速く早く速く速く走れ！ペダルを回せ！ケイデンス(一分間のペダルの回転数)を上げろ!!

心拍数？・・・そんなこと気にしていたらスピードはあげられない！

伝わってくる。鼓動が、血液が、全身に巡る感覚が。

「・・・ッ楽しい！」

メータに目をやると、「時速67キロ」と表示されている。

64から67の間を行ったり来たりしている。

・・・駄目だ。こんなのじゃ。

今、走っているのは平坦コース。

平坦なら、京都スプリントレース1位の私なら・・・・もっと早くなくちゃ・・・。

苦しい、きつい、痛い、怖い。

自転車に乗っている時、バランスを崩した時、落車した時。

苦しいけど、きついけど、痛いけど、怖いけど、

何より、楽しい。

バランス崩して落車しても、何処が悪かったとか、何がいけなかったとか、

考えるけど、最終的には可笑しくて笑ってしまう。



走ってると、やっぱり気持ちいい。

でも、少し喉乾いてしたな・・・

お！ラッキー！自販機あるやん！

んー、何買おっかな？と考えながら、財布を開く。

アクエリアスのボタンを押そうとした時、自販機に貼ってある、はりがみに目が行った。

【平坦150キロ、スプリントレース！参加者は中学生以上なら誰でも大丈夫！・・・】

スプリントレース・・・平坦150キロ・・・

貼紙に手を着き、そのはりがみをはぎ取る。




皆に、アパートの皆に、見に来てほしい＿＿＿＿＿。

第39話　（律）律視点→←第３７話　（琥時）　さく視点

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す