フェチズム達が集まるアパート！【小説】

第32話【綺羅】綺羅視点 ページ32

「今までお世話になりました」

家の玄関で立ち止まり母達に言った

でも、母は
「違うでしょ、綺羅」

何て言うのだ
「いってらっしゃい」

いつものように見送りたいようで……

「……いってきます、お母さん」

そう言い、大きな荷物をもって家を出た


そして、何故か俺は走っている


「ヤバイ、裏道使うんじゃなかった！」

人通り少ない道を選んで歩いていると変な輩にからまれたので走って逃げている途中だった

キャリーケースを何故か手で抱え半分涙目になっていた

「怖いぞ、彼奴ら……っ」

これまでにも何度かあったため俺にはトラウマになりかけていることだった

普段は竹刀などを持っているので対処はできたものの今回は手を少しでも空けるために家に置いてきてしまった

しかも、今回に限って集団だと！？

「はぁ……」

走り疲れた

そして、その場にしゃがみこんでしまった


「こう言うときに限って黎も兄さんも居ないなんて……」

すると、先程から追ってきていた奴等の声がした

“隠れねば！”


そう思った瞬間
相手に死角となりそうな場所を見つけそこに滑り込んだ


『アイツ、どこ行った！』

近い、ヤバイ、ヤバイ

『いませんねー』

心臓がバクバクしてどうにもならない

早くどっか行け！

それを願ってその場に留まっていた

キャリーケースを盾にして膝を抱え小さくなっていた

「早く、早く……」

震えて消えそうな小さな声で自分に言い聞かせた

そして、知らないうちに意識がなかった

寝てしまったのだろうか……？

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