フェチズム達が集まるアパート！【小説】

第１８話(shion)伊鞠視点 ページ18

「はぁ……」

この世界には、美しいものが少なすぎる。

有名なブランド物の３カラットのダイヤモンドのイヤリングを見て、ため息をひとつ。


この世の中には綺麗なものが少なすぎると思う。
正直言って、人間は僕から見れば汚いし、醜い。

こんな考え方をしている僕もどうかとは思うけど。僕はこれまで己の欲をぶつけるしか能が無いような奴としか会ったことがないからしょうがない。

「はぁ……」
自分に刺さる視線に、またため息をついた。

家にある物に飽きてあの過保護な親たちから引越し許可をもぎ取ったものの、何処へ行ってもじろじろ見られて疲れてしまう。

なんだよ、そんなに僕が珍しいかよ。

確かにうちは名門中の名門で、世界的にも有名な良家だ。
あれ、でも顔まで知られてたっけ？

……じゃあなんだ、この顔がいけないのか！？(逆切れ)
こんな女みたいな顔してるからか！？ 別に好きでこの顔になったわけじゃねーよばーか！！

頭の中で意味の分からない罵倒を繰り返しても、受け止めてくれる人なんているわけも無く。


「ねえ、君、俺らと遊ばない？」

ゴロゴロとアンティーク調の可愛らしいキャリーケースを引きずりながら歩いていると、唐突に声がかかった。

また来た。

目の前に立ちふさがった５つの影に目をやる。
チャラチャラした奴が２人、不良っぽい奴が３人。

ほんとにうっとうしい。

どうして俺はこんなに運が無いんだろう。
初対面の人には１００パーセント女と間違えられ、ナンパ、襲われる、誘拐なんて日常茶飯事だ。

あーあ、やっぱり車で送ってもらえばよかったな。アパートでは俺のことがばれない様に偽名を使おうか。

そんなことを考えながら、「あの、僕急いでいるので」と言葉を発する。

追いかけてくる５人を尻目に、アパートがあると教えられたほうへ駆け出した。

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