☆ ページ42
大きなお腹の妊婦さんがポニーテールを靡かせながら、こちらに向かって歩いてきた。
「!!翔さん?」
俺を見つけると、驚いたような顔をした。
その妊婦さんは、Aちゃんだった。
「やっぱり、Aちゃんだった」
肩口までに切り揃えていた髪は大分伸びて、家を出てから、もう半年以上経ったのだと時の経過を実感した。
俺は久しぶりにAちゃんに会って、涙が出そうになるのを堪えて笑った。
「ビックリした。大ちゃんも帰ってたの?」
大「アンタの様子を見にきたのよ」
「わざわざこんなところまで」
「Aちゃんは元気そうだね?」
あんな事があったから、Aちゃんの元気な姿を見てほっとした。
「元気だよ。みんなは元気?」
そう笑うAちゃんは、どこか寂しそうに見えた。
「淳くんが結婚したよ」
「テレビで見た」
「立ち直り早いよなぁ…」
淳くんは先月、一般の女性と結婚した。
あんなに、Aちゃんと言ってたのに、立ち直りが早くて驚くばかりだった。
若いって羨ましい。
「研二さんは?」
「研二さんは、たまに寂しそうにしてるけど、変わりないよ」
「全部知ってたみたいだったしね。優しいね、研二さんは」
研二さんは、俺たちが出会う前にAちゃんに会った事があるそうで、全てを知っていた。
わかっているのに、受け入れた研二さんは、やっぱり大人だと思った。
「豊は、カラ元気かな?ケンカしたままだったから、自分のせいだって言ってて……。週刊誌に撮られた事もあって、滅入ってるみたいだったよ」
「豊には悪い事したな…」
俺と豊は、簡単に吹っ切れる程、若くもなくて、全てを受け入れられる程、大人じゃなかった。
大「A、そのお腹……」
俺が聞きたくても聞けずにいたAちゃんのお腹の事を片桐さんが聞いてくれた。
「もうすぐ臨月」
大「父親は?」
Aちゃんは首を振った。
「俺たちの誰かなの?」
Aちゃんがシェアハウスに住んでいた頃、俺たちは奪い合うように求めていた。
こうなってもおかしくなかった。
「そうなるね……」
「誰かわからないんだね。どうして、みんなに気を持たせる様な事したの?」
「わざわざ説教しに来たの?」
「そんなつもりじゃないけど、Aちゃんを迎えに来た。一緒にあの家に帰ろう?」
「帰れないよ。わたしこんな最低な奴だよ」
「最低だよ。でも、そんなAちゃんだけど、俺たちは……俺は、必要なんだよ。一緒にいたいと思ってるんだ」
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匿名希望 - part2完結おめでとうございます。主人公の子供の父親だれだろう仝ζ鵑気―澆ん.リちゃん.ャンさんpart3はどんな話だろう (2017年4月9日 23時) (携帯から) (レス) id: 30f53721df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋色みさと | 作成日時:2017年3月28日 9時