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「前回の壁外調査の時、後列後方辺りに配置されていた兵士を私はこれから炙り出すつもりだ。」
「……了解した。目星がついたら直ぐに言え。俺が躾直してやる。」
「分かっている。だが、殺人沙汰にならないようにしてくれよ。人類最強が殺人を起こしてくれたとなるとお前は真っ先に憲兵に引き渡されるだろう。」
「なら俺の気が変わらない内にさっさと見つけ出せ。陣形を乱す、つまりそれは調査兵団組織に所属する兵士の命を殺めるのと同じことだ。」
「……。」
「実際、何人もの兵士が死んだ、前回の壁外調査でだ。どんな事情があるのかは知らねぇがまぁ、死刑は免れねぇだろうな。」
「…ジゼルが資産以外の目的で狙われる理由、それも気になる。ジゼルの様子を見ている限りジゼルは何も知らないようだしお前は出来る限りジゼルと共に行動してくれ。何かあった時の判断もお前に任せよう。……我々がずっと探しているこれまでの人間の黒幕は調査兵団に所属している兵士なのかもしれない。あくまで私の推測に過ぎないが…。」
そうでない事を祈る、と言ったエルヴィンの言葉に頷いた後部屋を後にした。
兵舎内なら安全だと思っていたがいちばん危険なのは兵舎内だ。本音を言えばこのままあいつをここから連れ去ってしまいたい。だがそれは許されない。あいつにはあいつしかできない仕事があり、俺も俺にしかできない仕事がある。
エルヴィンの言葉が頭に木霊した。黒い影がゆっくりと時間をかけて覆い尽くしているような気がした。
先程のエルヴィンとの会話のせいなのかリヴァイの顔はいつもより険しかった。通りすがる兵達が顔を真っ青にしていく。溜まりに溜まった執務を終わらせようと自室に向かった。
汚れひとつもない部屋。気分転換に掃除でもしようかと思ったが掃除するところがない程に綺麗で。仕方ない、とリヴァイは小さく息を吐き出しながら大量に重なっている書類と向き合う。
筆を手にし、自分の名前を記入したあと、書類に記載されている内容を読んでいく。簡単な作業に見えるだろうが何枚もあるととても面倒臭い。
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作者名:るかこ。 | 作成日時:2020年4月30日 13時