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そして暫く他愛もない話で盛り上がったがジゼルが時計を見て慌ただしく走っていった。きっと仕事が忙しいのだろう。目の下にできている隈がそう語っている。エレンやミカサ、アルミンはそれぞれの思いを胸にしまいながら訓練所へと足を向けていった。
はあはあ、と息を切らしながら辿り着いた場所は訓練所に設置されてある倉庫。今日は立体機動装置の点検日だ。
兵達が普段使っている立体機動装置を点検して、エルヴィン団長に不具合報告書を提出し、立体機動装置の修理をしていく。眩しい太陽の光に背伸びをしたジゼルはもう既に人集りの出来ている倉庫の扉を開けた。
そこでは忙しそうに動き回る技術部たち。狭い倉庫内で忙しく動き回る技術部たちの額には汗が滲んでいて。倉庫の入り口に並べられている立体機動装置を一つ一つ見詰めていればジゼルに気づいた技術部の兵士が手を上げる。
「ジゼル!こっちに不具合があったんだが…、どうにも直らなくてな。頼む、こっちに来てくれ!」
「は、はいっ!」
切羽詰まった技術部の兵士の元へと早歩きで向かえば兵士の周りには細かな部品が散りばめられてあって、どれだけこの兵士が不具合があるという立体機動装置に手こずっているのかが分かる。
頭を抱える技術部の兵士の傍には立体機動装置がポツリ、と置いてあった。
「えっと、どういった不具合でしょうか?」
「トリガーが硬いんだ。一度分解して油を差し込んだんだが改善しなくてな。」
「トリガー…?ちょっと見てみますね。」
そう言って手慣れた手つきでトリガーを分解していくジゼルの手際の良さに技術部の兵士がごくりと唾を飲む。
矢張り彼女は立体機動装置の発明者、アシュリー博士の血を色濃く受け継いでいる、と思いざるを得なかった。ジゼルの努力でもあるのだろうが、その手際の良さはまさに神業で。
伏し目がちに立体機動装置を見下ろして作業を開始していくジゼルに目を奪われていると、ジゼルの眉がぴくりと反応する。
「…どうした?」
「……これ、誰の立体機動装置ですか?」
そう言って顔を上げたジゼルには苦笑いが貼り付けられていた。立体機動装置の持ち主は余程扱いが雑いのだろうか。
「…………ハンジ分隊長のものだ。」
「……やっぱり。」
兵士の中で一番立体機動装置の扱いが雑なのはハンジだ。
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作者名:るかこ。 | 作成日時:2020年4月30日 13時