極度の対人恐怖と悪女さん。【AU】 (ページ35)

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「…なんですか。触らないでください。」

「…説明しろ。お前の傷はなんなんだよ。切り傷は無いくせに、打撲痕とかばっかりついてるじゃないか。」

「……、私の口からそれを言わせないでください。これ以上は、精神的に危うくなるので。」

掴まれている手を振り払ってポータルに戻ろうとすれば、マスタードさんは今度は私に絡まっている糸の方を引っ張り、雪の上に押し倒した。

「ひッ」

そして顔の横辺りの雪の上に先の尖った骨が刺される。

「オレはいつでもお前を殺せる。言え。嘘はつくんじゃないぞ？真実がわかった時嘘だと分かったらその時は殺す。」

どうせ私の言ったこと全部嘘だって決めつけるくせに何が嘘はつくなだよ。

真実だっていつもひとつなわけじゃない。某少年探偵気取りかよ。真実は人の数だけ変わる。ひとつなのは、その場で何が起こったのかという事実だけだ。

「…最初は、普通にセリーナさんと、遊ぶような仲だった。だけど、…いつの日からか…、セリーナさんは悪口を言ったり、少し暴力を振るうことが増えて…、それがっ…、エスカレートしてっ…、…セリーナさんは、皆に私に虐められてるって…嘘ついて…、私っ…、皆にも悪口とか言われて…っ…。」

だんだんと自分の息が荒くなるのを感じる。なんせ、いつも怖いと感じていた人物達の1人が、こんなに近くにいる上、今まで何が起こっていたのかを説明しろと言い出した。脅し付きで。

今まで我慢していた涙がポロポロと零れ落ちる。マスタードさんに腕を押さえられていて抵抗もできないし、涙も拭けない。

「っ…、もぅ、やだ…。私に、構わないでよ…っ…、見ないでよ…。…。帰らせてよ…。」

そういうとマスタードさんは私の目を乱暴に拭く。

「泣くのはやめろ。お前を泣かせたって知られたら、お前の過激派にオレが殺される。」

泣き止ませるためか、私に過激派がいるという嘘をついて自分の服の袖で私の頬や顔に着いた涙を焦った様子でマスタードさんは拭き取る。

「オイオイ、過激派ってもしかして俺の事か？」

頬にポタリと黒くネバネバした粘着性の液体…、のようなものが落ちてくる。

これは…。

「…メア…。」

顎を上げて、後ろの景色を見てみれば、そこにはイライラしているのかくねくねと黒い触手を暴れさせているメアの姿があった。

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