episode 41 ページ5
「ラスト1本でーす」
「Aちゃん」
「あっ♡潔子さん♡」
ランニングのタイムを取っていると、愛しの潔子さんに話しかけられた。
後ろにはやっちゃんもいる。
「烏野の方は大丈夫ですか?」
「こっちは二人いるから大丈夫。ごめんね、一人で任せちゃって」
「モーマンタイです!」
「流石だね。仁花ちゃん、Aちゃんは仁花ちゃんと同い年だけど、中学の頃からずっとマネージャーをやってるし、その頃から青城の人たちと関わってるから慣れてるんだ」
「なるほど…信頼ってやつですね」
感心したようなやっちゃんに、得意げに笑って見せる。
そのせいで妹みたいな扱いなんだけれども。
「こっちは大丈夫ですから、お二人は烏野のサポートお願いします」
「そう?ごめんね、ありがとう」
「潔子さんに労わってもらえたら何日でも寝ずに働けます!白鳥沢は明日の昼頃に到着ですよね?それまで頑張ろうね、やっちゃん!」
「シャチっ!!」
潔子さんは微笑んで、やっちゃんを連れて烏野の方へ戻って行った。
今回、参加人数が一番多いのは烏野だ。地元だから仕方がないことだけれど、それを慣れていないやっちゃん一人に任せるのもしのびない。それに、そんなやっちゃんを慣れていない他のバレー部につけるのも。
そこでこの私だ。
暫くすると、走り込んでいた人たちが戻ってくる。
「お疲れ様でーす。タオルと水置いてるので、取って行って休憩してください」
「俺タイム縮んだ?」
「二口先輩は……25秒ほど縮んでますね。凄いです」
私の手元を覗き込んできた二口先輩は、満足そうに笑った。
「Aちゃん、マネージャー慣れてるからやりやすい」
「口説いてます?」
「俺が口説くならこんなもんじゃねーよ」
「あっはっは!!工業高校がなんか言ってる〜」
「おい!工業高校だって女子いるからな!!」
二人で戯れていると、じっとりと視線を感じて振り返る。
及川さんがかなりの形相でこちらを睨みつけていた。
「……ねー、岩ちゃん。なんかあいつ馴れ馴れしくない?」
「見苦しい嫉妬だな」
「はあ!?違うんですけど!?Aは男慣れしてないから変な男に騙されないか心配してるだけだし!」
……全部聞こえてるっつの。
二口先輩も、それを見て苦笑いを浮かべる。
「何あれ、Aちゃんのママ?」
「その隣はパパです」
「それでも良いから帰ってきてよA!!」
「あー、うるさいうるさい。私は今日は伊達工のマネでもあるんですからね」
「浮気者ー!!」
めんどくさい彼女みたいなこと言い出したな…。
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