episode 40 ページ4
「ねえAちゃん。マネージャーの仕事の件なんだけど…」
「はい!なんでしょうか!?」
丁度昼食前になるので、選手のみんなは自主練の中、私たちマネージャーと一部の先生コーチ陣は、厨房に入って昼ごはんを作っていた。
私はお味噌汁係をしていたのだが、そんな時愛しの潔子さんに話しかけられたのだ。
勿論、一番の笑顔で振り返った。
「仁花ちゃんは、まだマネージャーになったばっかりで慣れてないんだ。だから、私と一緒に動きたくって…Aちゃんに一人で学校二つを担当してもらうことになるんだけど」
「任せてください!慣れたものですよ!」
私の天使のお願いとあらば、叶えて差し上げるのが世の理。
幸い私は中学の頃から慣れているし問題はない。
問題は、くじ引きでどの学校に当たるかってことなんだけど。
「まさかすぎますって…」
「さっきの子じゃん!よろしく〜。もう連絡先交換してくれる気になった?」
「…二口先輩、早く戻らないと茂庭さんに怒られますよ」
公正なくじ引きの結果、私の担当は青葉城西と伊達工業になった。
いつもどのように記録を取っているのか、舞先輩の記録ノートを確認して書き込んでいると、チャラ男こと二口先輩が話しかけてくる。すぐに青根さんに引き摺られていったけれど。
隣のコートでは及川さんがかなり騒いでいて、少しうるさい。どれほど叫ぼうが、私は今日は伊達工のマネージャーでもあるのだから、手を離すことはできない。
「お宅の主将、すごいAちゃんのこと好きなんだね」
「…及川さん?」
休憩中、選手達にタオルを渡していると、二口先輩に話しかけられた。
チラリとうちの部長を見る。未だに伊達工業のことを睨みつけている彼は、岩泉先輩に殴られている。
「……妹みたいに思ってるって聞きましたけど。色気がないからって」
「えー?こんなに可愛いのに」
「顔だけらしいですよ。二口先輩もそう思います?」
「まあ、色気はないな」
失礼な……。
よく言われますー、とあしらい、私は青城の方にもタオルを渡しに行く。
まるで10年来のように歓迎を受けながら、汗だくの及川さんに抱きつかれて、冷めた目でタオルを渡す。
「離れてくださいよ。汗が汚い」
「酷い!俺の汗なんだから綺麗だよ!」
「汗の成分なんてどんな人間も同じですよ。ちゃんと水分補給してましたか?こんなに汗をかいてたら、倒れちゃいますよ」
「実家のような安心感……もう二度と俺たち以外のマネージャーしないで…」
「ちょっと無理な話ですね…」
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