episode 39 ページ3
ドンッ
「いた…」
「……」
またぶつかってしまったが、今回私はよろけて転けそうになったところを逞しい腕に支えられた。
涙目になりながら見上げると、私のことをじっと見下ろしているいかつい男と目が合う。
この人は知っている。青根さんだ。
「ん?青根?お前何してんの」
「……ぶつかった」
「ぶつかった?」
青根さんの横から顔を出したのは、性格の悪そうなイケメンだった。及川さんとは別のタイプのイケメンだ。
及川さんは優男に見えるけど、こっちはかなり普通に性格が悪そう…私はできるマネなので、この人のこともしっかりマーク済みである。
二口堅治。ブロック勝負の伊達工の2年生。つまり、先輩だ。
嫌そうな顔をした私に、二口先輩はにっこりとうちの主将顔負けの爽やかな笑顔を浮かべた。
「青城のマネちゃんだ。可愛いね〜。連絡先とか交換しない?」
「こら、二口!他校のマネナンパすんな!」
「私、うちの主将と同じタイプの人と連絡先交換するのは、しっかり相手を見極めてからって決めてるんで、お断りします」
「しっかりしてんなあ」
少し穏やかなタイプの彼は、伊達工業を引っ張っている苦労人、茂庭さん。
あなたとは、いつでも交換可能ですよ!
…それにしても。
「伊達工業って、マネージャーいましたよね?」
去年IH予選で見た気がするんだけど。その時は1年生だったはずだから、今年はまだ現役なのでは…?
不思議そうに首を傾げる私に、鎌崎先輩が説明してくれる。
どうやら、彼女…舞先輩は、お家の用事で今回は合宿をパスしているらしい。
なんてことだ。
「……ってことは…」
チラリと手元にある部屋割りプリントに目を落とす。
今回参加する学校は四つ。
雑食プレイの烏野高校。
不動の王者、白鳥沢学園。
鉄壁ブロック、伊達工業高校。
そして我らが青葉城西高校。
そう、どこも大所帯で、さらにマネージャーは合わせて3人。
なんの冗談だ!?
私は過労で倒れる未来を想像して、今から泡を吐きそうになるのだった。
勿論、コーチや監督達も手伝ってはくれるだろう。が、やはりマネージメントの名の如く、マネージャーがちょろちょろと動き回るしかない。
「……皆さんのお部屋は、3階の一番奥です。では、また練習が始まってから」
「あ、ありがとうございます」
「敬語じゃなくて良いですよ。私まだ一年生なんで、ぺーぺーです。あっ、助けてくださってありがとうございました」
では、とぺこりと頭を下げて及川さん達の元へ戻る。
あの人たち心配性だから、今頃私が帰って来なくて心配で倒れてるかもしれないし。
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