養ってください。【宮治】

7話 ページ7

そう言えば、アタシが初めて宮に料理振る舞ったんって、高1の合宿の時やっけ？
あの頃は超無愛想なJKやったなぁ、アタシ…。


「お願いや、マネやってくれへん？合宿の間だけや」
「う…き、北さんが言うなら…」
「！ホンマ？ありがとうな、ホンマにありがとう」

一つ上の北さん。後にあのバレー部をまとめ上げる部長兼主将。通称オカン。
そんな人に頭下げられて断れる人稲荷崎におらん。


合宿の間だけ、と言う約束で初めて部活をした。そん時にバレーに魅せられてそれから高校3年間ずっとバレー部マネやっとってんけど、まぁそれはええわ。
とにかく初めての合宿で、しかもマネも初めてでホンマになんも出来へんかった。

宮侑には“役立たず”言われたし、ホンマに帰りたいとか思っててん。

でもマネージャーが唯一1人きりになれる瞬間が、晩ご飯を作っとる時やった。あん時だけは周りの目とかなかったし、ホンマリラックスしとったわ。
昼間なんも出来へんかったし、せめて夜だけは役立とうと思って得意の料理振る舞った。


「あ、手伝われへんくてごめんな、大変やったやろ」
「いやいや、アタシこれ以外なんも出来へんし…ええんです、北さんは気にせんとってください」


気にするとしたらあの金髪やろ。
あんま関わってないけどアタシあいつ苦手や。

ブツブツ頭で同級生の悪口を並べていると、その片割れが前に来た。マネがその場で配膳するから選手一人一人の顔が見れる。
やっぱ似とんなぁ…えっと…サム…？


「あの」
「あっ、はい」
「Aさん、同じ学年ですよね？俺らと一緒に食いません？」
「えっ…ええんですか」
「ええですよ、じゃ、待ってるんで」

初会話終了。自分のコミュ障を恨んだ。

ちょっと落ち込みながら配膳をして自分のも入れてさっき誘ってくれた銀髪の横に座る。
これであの金髪の顔見んで済むわ。

いただきます、と大きな声が響く。ちりつも(塵も積もれば山となる)の要領やな、なんて思いながら味噌汁に口をつける。
うん、我ながら上出来。

すると、横からでっかい声。

「うっま！！こんな美味いメシ作れんの！？」
「めっちゃ美味い！自分天才ちゃう！？」
「ちょっと食事中くらい静かに食べてよ…」


チベスナ(名前忘れた)が双子2人を見て呆れた様に溜息を吐く。
え、何？アタシ褒められとる？

混乱して箸が止まっているアタシに、北さんがホンマに美味しいわ、ありがとうな、と神様の様な笑みを向けてくれた。
その顔見れただけで今日1日あった嫌なこと全部チャラや。

8話→←6話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す