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やっぱり戻ってきてる…。いつもと変わらない、二次元の世界だ。
グッと拳を握りしめて街を歩く。
街灯がパチパチと点き、その周りに虫が集まった。
この前、元の世界に一瞬だけ戻ったときにわかってしまった。と言うより、今まで気づいていたけど気づかないフリをしていたことを突きつけられたと言った方が正しい。
私はこの世界の人間ではない。
立ち止まってみても、人混みに混ざってみても、やっぱり孤立感が拭えない。
「…私、戻らなきゃなのかな…」
でも、戻れない理由がある。
ボソリと呟いた言葉は、広がった大空に吸い込まれていくような気がして。
誰にも届かない、やっぱり私は───────…。
「Aちゃん?」
「!…トド松、どうしたの?こんな時間に、こんな場所に…」
振り返ると、不思議そうにこちらを見ているトド松と目が合った。
こんな人混みにいるのに直ぐに見つかる…やっぱり、おかしく見える?浮いて見える?
「僕は友達と遊んだ帰り。一緒に帰ろ、Aちゃん」
ついこの間目覚めたばっかなんだし、と言いつつ私の横に並んだトド松。
…そうだよね、休んで、もう一度ちゃんと考えなきゃ。
今日は誰と一緒に寝るんだっけ。相談してみてもいいかもしれない。
精神的に首を絞められていく感覚がわかる。
追い込まれているのに、なぜか嫌な気はしない。
「何か悩み?」
「え?どうして?」
「…元気ないな、って」
私ってやっぱりわかりやすいかな、と苦笑いを浮かべると、いいことじゃない?とトド松も笑う。
…トド松になら、相談してもいいかもしれない。
「私、一松のことが好きかもしれない」
「…えっ」
驚いたように立ち止まったトド松。
目にはいろんな思いが浮かんでいるようだ。
「…なんで一松兄さん?」
「なんでだろ…すごく可愛くて、かっこいいと思ったの」
元々好きだったんだけどね、とは言わない。
猫好きなところも、本当は兄弟が大好きなところも、SなのかMなのかわからないところも、みんな可愛いと思っていた。
でもこの世界にきてから、なぜか、かっこいいな、と思うことも多くなって。
「私元々夢女子ってやつだったから、その気はあったんだけど」
まさか本当に画面の中の人に恋してしまうなんて。
イタイ、イタすぎる。カラ松のこととやかく言える立場じゃない。
「…でも私、この世界の住人じゃないし」
別の世界の人に恋するなんて、無謀なことしたくはない。だけど、これ以上一緒にいると…。
「だから私、早く元の世界に戻りたい」
呟いた小さい声は、儚く消えていった。
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松々先輩(プロフ) - 月花さん» ありがとうございます!!これからお話は急展開…できればいいな、と思います!頑張ります!! (2020年10月5日 0時) (レス) id: 884552bd5f (このIDを非表示/違反報告)
月花 - すっっごい面白いです!頑張ってください! (2020年10月4日 23時) (レス) id: 23cb55ce5b (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - Rain☆さん» ありがとうございます!!了解です!頑張りますね! (2020年5月14日 22時) (レス) id: a6e4fce6a1 (このIDを非表示/違反報告)
Rain☆ - 一松!!もう本当に尊いです!一番の推しです!更新頑張ってください! (2020年5月14日 14時) (レス) id: 3af4d419c0 (このIDを非表示/違反報告)
なー。(プロフ) - ですねー、おそ松さんも3期期待です! (2019年12月11日 18時) (レス) id: 13b122a5bb (このIDを非表示/違反報告)
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