〃 ページ5
その時。
prrrr
スカートのポケットの中に入っている携帯が振動する。
震える手でそれを掴んで、ピ、っと通話ボタンを押した。
この際誰でもいいから助けてくれ。
出来るだけマシな人でありますように、と願いを込めて耳に当てる。
すると、聞こえてきたのは鈴のような女の子の声。
『生きたい?』
そう言う声に、何故か聞き覚えがあって。
驚いて目を見開く。
「生き、たい」
かろうじて絞り出した声は、ありえないほどに掠れていた。
それでも、電話の主は優しい声で、そう、と呟く。
ピチョン
静かな水音が、あたりにこだました。
そっちを見ると、あの沈んだ友人が。
思い出した。
あの声は……あの声は、あの女の子の声だ。
綺麗な緑の瞳の女の子は右手に小瓶を握りしめ、左手に携帯電話を持っている。
その真新しい携帯電話に見覚えがあった。
『新しく買ってもらったんだ』
そう言って嬉しそうに笑うあの子の顔が浮かんで。
十四松を見ると、呆気にとられたような顔で女の子を見つめている。
邪悪な霊がその子に手を出そうとするけど、周りの空気に触れただけで浄化されてるみたいだった。
それもそのはず。
あの子の家は、この前一松と行った廃墟に住んでいた巫と並ぶほどの力を持つ、この国の二大巫家と呼ばれていた家なのだ。(私の家は巫以外もやってるから例外)
「凄いです!!霊になるとやはり霊力はアップするんですか?」
「まぁ……少しはするよ。久しぶりだね、A。なんか子供っぽくなった?」
「失礼ですね…これでも一応高校生になったんですよ」
霊と親しく会話をする私を見て、首を傾げる十四松。
十四松になら、この子が誰なのか教えてもいいかな。
「十四松。こちら、あの未解決の行方不明事件の被害者、
「凄い人〜?」
「そうですね、凄い人です」
Aの方が凄い人よ、と笑う女の子は、少し悲しそうな顔をした。
「あたし、もうそろそろ行かなきゃ」
「行く?どこにです?」
「ずっと気がかりだったんだ。あのあと、きっとAは犯人だって言われて傷ついたはずだって。だから、あの世に行く前に絶対にAを見なきゃって。まぁ心配することなかったかもしれないけど…」
「でも…私が、あの日ダムに行くなんて言わなければ……」
「行ったのはあたしだから、私が悪いよ。それより来世でも、一緒に遊ぼうね!あとお兄ちゃんよろしくね」
そう言って、最後まで笑顔で消えていった。
56人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
松々先輩(プロフ) - 松野美海さん» 自我失礼します……私の推しはもっぱら一松です……あの卑屈感がたまらないです最高です (2022年9月30日 0時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
松野美海 - 凄く面白いです!最初から読んでたら時間が…!つい夢中になってました!更新頑張って下さい!待ってます!ちなみに松々先輩さんはなに松推しなんですか?私はチョロ兄です☆((( (2022年9月30日 0時) (レス) @page28 id: b94de068e4 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - kuuさん» 一「ほんとに、ムカつくよね……一定数いるよ、あーゆうクズ…あ、僕もそれなりにクズだけど。フヒヒ……応援ありがと、励みにしてこれからも頑張るね…」 (2022年1月27日 3時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 子犬の話し本気で泣きました!なんかすごく話しなんですけど腹たちました!こんクソ野郎!すごく怪奇百鬼夜行の話大好きです^ - ^応援してます (2022年1月26日 8時) (レス) @page23 id: 1c1723a482 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - 月花さん» チ「あぁ、そうだね、ありがとう。もう4作目になるんだね。これからもよろしくね」夢「えっ、それで終わりですか?もっとあるでしょう!!えーっと、この作品を読んでくれてありがとうございます!是非次回のお話も楽しみにしてください!ありがとうございました」 (2020年10月5日 0時) (レス) id: 884552bd5f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ