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『死にたくなかった』
『村を返せ』
『生きる意味がなくなった』
そんな言葉が次々に頭に浮かんで行く。
言っておくが、私は聖徳太子ではないので、一斉に何人もの声を聞き分けることはできない。それを踏まえた上でこの人たちは私に物を言っているんだろうか?
自然と眉間に皺がよる。
霊から話しかけられる時は、必ず体に異常をきたす。それが今回は吐き気だっただけで。
「十四、松…ここ…って、もし、かして……自、殺……の、名所、ですか…?」
「今調べたけど、そうなってるよ!A大丈夫!?」
「私、は無事、です…」
それにしても、話が出来すぎているんじゃないか?てか圏外じゃないんだ。
霊能者、そして10年前にここで起きた事件の容疑者になった子供の電話に、何十年も前にこのダムの下に沈んだ村から電話がかかってくる。そしてここは飛び込みの名所。
赤塚ダムか……。
綺麗なものの裏には必ず闇があるとはよく言ったものだ、と私は失笑した。
「それより、早く、その瓶の中身を……」
十四松が小瓶の口に刺さってあるコルクを開けようとした瞬間、ゴォッと豪風が吹き荒れた。
それは十四松でも煽られて倒れてしまうような、まるで強い台風が通り過ぎていったような風だ。
そして風に小瓶が飛ばされる。
あっちゃー…。
私と十四松は、小瓶が落ちた後の水面の静かに揺れる水を見つめる。
二人の頭の中にある言葉は一つ。
終わった。
人生終わらせたくないんだけどー!今ここで終わるとかシャレになんないんだけどー!
しかし十四松を責めても仕方がない。十四松が悪いわけではないのだから。
そして、私は自分の腕に触れる冷たい感覚で意識を戻す。
いけない、こんなことしてる暇はないのだ。
腕には既に、男の手が触れていた。
それに嫌悪感を抱くが、それ以前に私はあの聖水以外の除霊道具を持ち合わせていない。
これこそ絶体絶命の大ピンチというやつじゃないか。
少女漫画だったらここでヒーロー役…とにかく男という部類の生物が助けに来るんだろうが、今はその男と呼ばれる生物の命も危ない。
では少年漫画だったらどうだろうか。例えば、主人公の伝説の才能が開花するんだろうか。いや、私は普通の一般女子高校生だ。
では青年漫画の場合は?あまり私は青年漫画を知らないが、こんな場面まず来ない。
ということで、多分史上初の『ヤバい主人公もヒーローも死んじゃうんじゃね?』シーンである。
ちなみに、今はふざけている場合ではないことは私もわかっている。
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松々先輩(プロフ) - 松野美海さん» 自我失礼します……私の推しはもっぱら一松です……あの卑屈感がたまらないです最高です (2022年9月30日 0時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
松野美海 - 凄く面白いです!最初から読んでたら時間が…!つい夢中になってました!更新頑張って下さい!待ってます!ちなみに松々先輩さんはなに松推しなんですか?私はチョロ兄です☆((( (2022年9月30日 0時) (レス) @page28 id: b94de068e4 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - kuuさん» 一「ほんとに、ムカつくよね……一定数いるよ、あーゆうクズ…あ、僕もそれなりにクズだけど。フヒヒ……応援ありがと、励みにしてこれからも頑張るね…」 (2022年1月27日 3時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 子犬の話し本気で泣きました!なんかすごく話しなんですけど腹たちました!こんクソ野郎!すごく怪奇百鬼夜行の話大好きです^ - ^応援してます (2022年1月26日 8時) (レス) @page23 id: 1c1723a482 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - 月花さん» チ「あぁ、そうだね、ありがとう。もう4作目になるんだね。これからもよろしくね」夢「えっ、それで終わりですか?もっとあるでしょう!!えーっと、この作品を読んでくれてありがとうございます!是非次回のお話も楽しみにしてください!ありがとうございました」 (2020年10月5日 0時) (レス) id: 884552bd5f (このIDを非表示/違反報告)
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