２６話 ページ28
どうしようもなく心臓がうるさいので、今しがた少し路地裏で休ませてもらっている。
ふぅ、っと息を吐くと、パタパタと忙しそうな足音がした。
その後にゆっくりと近づいてくるペタペタと足をする音。
「…一松」
「ん、いたの」
「ここ猫いるし、落ち着く」
だよね、と小さく呟いた一松の声がマスクの中でこもる。
水を飲み干してゴミ箱に投げ入れると、綺麗に入った。
「おっし」
ガッツポーズをして、一松を見ると、ジッと私の顔を見つめていた。
「何？」
「…化粧してないの？」
「？うん、肌は綺麗にしないとね！」
「へぇ…肌白いね」
「一松にだけは言われたくないわー」
ずっと影にいるし、休日は家で引きこもりしてる一松の方がよっぽど肌白いじゃん。
す、っと頬を触ると、Aー、と呼ぶ声がする。
「何ー？今行くー！あ、ごめんね一松。もう行かなきゃ。猫ちゃんによろしく」
「あ、待ってA…」
私を呼び止めた一松。
振り返ると、伝言、と言ってから、マスクを下ろした。
「クソ松から。放課後、残れだってさ」
「言われなくても残るわあのクズ」
べ、と舌を出し、呼ばれた方にかけて行く。
一松が猫に餌をやるところを見て、いじめられていた猫を思い出した。
無事完治し、今もどこかで子猫たちを守っていることだろう。
良かった、と頷いて舞台に戻った。
「え、チケット配り？」
先生に言われた仕事。それは、ヒロインとヒーロー役で劇のチケットを売ること。
ただでさえカラ松と組みたくない劇だったのに、売るのまで一緒になるとは。
「大丈夫！舞台前で売るだけだし、量は他より少ないから！」
「teacher、一つ言いたいことがあるんだが…」
部室に入ってきたカラ松が、一枚のポスターを持って先生の前に立つ。
「このキャッチコピーはなんだ？『演劇部最強の二人がカップルを熱演！』と書かれてあるが…」
「間違ったことは書いてないだろう？」
「これだと仲が良いと思われてしまう。現に、ついさっき後輩の女子に付き合っていると勘違いされていたぞ」
「あんたそれ、ちゃんと言い直したでしょうね」
当たり前だ、と言ったカラ松。
それはそれでムカつくわ。
「とにかく、寸法するからAこっちな」
ズルズルと衣装係に連れて行かれ、バストやらウエストやらを測られる。
とても恥ずかしいのはいつものことだ。
「セーラー服でしょ？どれでも…」
「いいえ、私たちは衣装に全力を注ぎます」
「えー…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
松々先輩(プロフ) - 進撃のカラ松さん» いえいえ〜！こちらこそありがとうございます！あと1話、番外編がありますので、それまで気長にお待ちいただければ嬉しいです！ (2019年3月1日 7時) (
レス) id: 87a69031e6 (このIDを非表示/違反報告)
進撃のカラ松 - ありがとうございましたぁぁぁぁあ！！良かったです！！ (2019年2月28日 22時) (レス) id: 2a91d83e29 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - るんこさん» いえいえ！！こちらこそ、読んでくださりありがとうございます！番外編もありますので、あと二話、よろしくお願いします (2019年2月9日 22時) (レス) id: 3db3ef1937 (このIDを非表示/違反報告)
るんこ(プロフ) - 完結お疲れ様でした！このなんとも言えない距離感がすごい好きで、しかも最後の方とか発狂しそうでした笑笑とても面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！ (2019年2月9日 20時) (レス) id: 01dc95890b (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - よつ葉@原色松推し(´ `*)さん» ありがとうございます！！私もカラ松大好きです！あぁいうノリ好きなので嬉しいです〜！ (2019年1月6日 23時) (レス) id: 3db3ef1937 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
