大嫌いな君と【カラ松】

１８話 ページ20

「早く舞台に行くぞ、A」
「……えぇ、そうね」
「……どうした、元気がないが。いつもの馬鹿みたいなテンションはどうした」
「マジでムカつくから一回しばくよ？」

拳を作って見せると、だったら安心だな、と頷く。
……心配してたのかな？


……馬鹿らしい。




『好きだ』
『……私は、好きじゃない』


このカラ松の好きも、全部物語のヒロインに送ってるものなんだって思うと複雑。
嬉しくない。けど、安心する。


「……なぁ、A」
「なっ…何？」


壁ドン途中。(これも劇の練習)
カラ松が話しかけて来る。

練習中は気にならなかった顔の近さが急に気になる。


「お前確か、家に親いなかったよな？」
「え？何で知ってんの、怖いんだけど」
「トド松の情報網をナメるなよ」

ヒエ、あんな可愛い顔してえげつね…。



「今日家に行っても良いか？」
「えっ」
「母さんに許可は取っている。服は心配いらない」
「え、ぃや、そうじゃな…」


家にはシスコンどもが…！

「私は良いんだけどね…？」
「なら決定じゃないか。これで夜通し練習ができるな！」
「う…」

嬉しそうなカラ松に何も言えなかった。



「ただいま…」
「お邪魔します」


いつも通りカラ松に電車で守られ、おじさんに体触られてメンタルが壊れそうな私が帰宅。
するといつも通り、部活帰りの弟が出迎える。


「おかえり姉ちゃん！今日も可愛いなー！ところで、後ろの男誰」
「笑顔怖いんだけど」
「？」

状況把握できていないカラ松。
玄関で固まって実に十五分経過。


「A、少し来てくれ」
「え」


手を引かれて外に出ると、フゥッと一息ついたカラ松が私に言った。


「弟がいるなんて聞いてないぞ！」
「あ、あれ？言ってなかったかな…てっきり言ってるものだと…て言うか知ってるものだと」
「俺はお前のストーカーじゃないんだ。家族構成まで把握してるわけないだろう」

まぁそうか…？と思ったが、トド松は全部知ってるはずだ。
トド松にどこまで教えたか聞く。


「えー？僕全部教えたよ？」
「やっぱりあいつの頭がポンコツなだけね」

そうだね、と言っていたトド松にお礼を言って電話を切る。
カラ松の頭はニワトリ並みだと改めて理解した。


「じゃあ改めて紹介するね、こちらカラ松。私の隣の席で、同じ部活の男子」
「よろしくね」
「よろしくっす…」
「…あぁ、よろしく頼む」


弟が口を尖らせているが、放っておこう。
今日は帰ろうか…？と言っていたカラ松だった。

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