潔癖執事とお嬢様【チョロ松】

執事が十人 ページ12

「ちょ、チョロ松！？」


一気に体温が上がる。


「待ってください、と言えば待つのが主流ですよ…？A様…？」
「ひっ…！？」

耳元で囁くように話すチョロ松。息がかかってくすぐったい。


潔癖で、私を起こすのにも物で叩き起こすと言う方法を使っていたはずのチョロ松。
それが今はなんだ。

後ろから抱きつく！？

私に触れれば、５時間手を洗っているあのチョロ松が自分から！？
天変地異の前触れかしら…。


頭が混乱しすぎてショートしそうだ。

とりあえずチョロ松には離れていただきたいのだが…。


「あ、あの、チョロ松、離れてくれないかしら…」
「なぜです？」
「貴方潔癖でしょう？」
「…確かにそうですが、私の性格の前にお嬢様の捻くれた精神を治さなければいけない、と判断いたしました」
「失礼ね！？」

私はいつもお嬢様を優先で考えますので、と言う。
どの口が言ってんだ！！←

でも言い返せない。そんな余裕が存在しないのだ。
この潔癖にドキドキしているなんて認めたくないが、心臓は早すぎるほど脈打っている。


「や、やめっ…」
「…あぁ、もう我慢できない」


ボソッとそう呟いたと思ったら、ツカツカとトイレに向かう。

「ちょ、チョロ松？」
「手を洗います。３時間、休憩を頂きますね」



やっぱりそうなるよね、なんとなくわかってた。←


良かったぁ、間違ってもチョロ松にだけはドキドキしないもんね！
少し安心して、ホールに戻った私だった。



「あ、おそ松！さっき＿＿＿＿＿＿」
「？」


ケーキを頬張っているおそ松に、さっきあったことを話そうとする。
いつもなら躊躇なく話せるはずだったのに、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。

どうして？

「A…？なんかあった？」
「う、ううん！なんでもない！！あ、そのケーキ美味しそうね！」
「あぁ、コレ？美味しいよ〜？」
「じゃあ今度コックに作らせるわね！あ、十四松先生！コレいかがですか？」

恥ずかしさを誤魔化すように、いろんな知り合いに話しかける。
こうでもしないと、頭が熱くてパンクしてしまいそう。



「お嬢様。少々はしゃぎ過ぎだと思いますが……」
「ひぃっ！？」
「チョロ松…honeyをここまで怖がらせるなんて、一体なにをしでかしたんだ？」


特になにも…と言うチョロ松の目は、確かに何も言わないでと言っていた。
目で訴えかけるって…。

「あーお前らだけアイコンタクトできて良いなー！お兄ちゃんも混ぜて〜」


そう言うわけではないのだが。

執事が十一人→←執事が九人

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