カラッポ【カラ松】

Forty four episodes ページ50

「……ねぇ、カラ松……少し、話があるんだけど……」


ザーッと降り続く雨

私はその中を傘もささずに佇んでいた


『？どうした？』
「……カラ松、私といて…楽しい…？」



＿＿＿＿＿え？と時間が経って聞こえた疑問の声

私は顔に笑顔を貼り付けて返事を待つ


私はいつまでも返事を待っているつもりだ

雨が止んでも、もっと酷くなっても、ずっとここに立って


プーッとクラクションを鳴らした車がタイヤの音を大きく立てながら通り過ぎていった
そして雨が水面を打つ


私は今、隠された泉、と呼ばれている女神伝説のある場所に来ている


私は凄くここが好きだ

初めてカラ松が、私と手を繋いでくれたところだから＿＿＿


フラれるなら、ここが良いかなって…


ゴーン…ゴーン…と夜の７時を告げる鐘が鳴った

あぁ、あの時計…まだ、動いてたんだ……


「ねぇ、カラ松。答えて。私のこと、どう思ってるの…？」
『……今、あの泉にいるんだな』
「？」


そう言ったカラ松の低い声

そして電話も切らずに急いで家を出るカラ松の足音と吐息が聞こえた


それだけで、愛おしくて



「ッ……ねぇっ！！答えて！私のことどう思ってるのよ！」
『……愛してるぞ』


“愛してる”

それじゃダメなの

私は満足できないの


欲しがり？わがまま？
何言われたって良い


ポロポロと流れる涙が、雨と一緒に混じり合って泉の水面に波紋を浮かべた


「……私も……私も、“好き”よ……カラ松…」



あなたは最後まで、“好き”だとは言ってくれなかったわね

どうしてそんなに頑ななの？
何が貴方を捉えるの？



教えてくれないとわからないの

難しい恋は苦手で



「カラ松……ごめんね…バイバイ……」


ゴーンゴーン…とまた低くて綺麗な鐘の音が聞こえる


それと、カラ松の制止の声も



さようなら、と呟く





そして私は静かに電話を切った







ねぇ


『貴方』と『私』


『教師』と『教師』


『元同級生』




これ以外に、『関係』なんてなくても良かったのかな



寧ろ、そっちの方が幸せなのかな……？




私は静かに歩き出す




「……あ、ごめん…ちょっと今晩だけ泊めてくれないかなって…うん、うん………えぇ、ありがとう」




そこに愛がないのなら、私は好きでも手放せる


愛されない、これ以上悲しいことは早々ないだろうし…



＿＿＿


次続編です！

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