カラッポ【カラ松】

Forty two episodes ページ48

「私…愛のある言葉が、聞きたいの…」
「A…？」


不思議そうに首を傾ける一松

順風満帆だった私達を見ていれば、みんな不思議がるだろう
これでも愛を求める私は我儘なんだと


それでも私は、空っぽの言葉なんかじゃなくて愛が欲しい

空っぽな言葉は聞き飽きた


ねぇ、もしかして、昔からずっと言葉は空っぽだったのかな…？



もう私、わからなくなって


「一松ッ……私じゃ、ダメなのかな…」


私じゃカラ松のこと、幸せにできないのかな

トト子みたいな可愛い女の子の方が、やっぱり良いのかな



「わからないの。私、どうしようって考えるのに…馬鹿だから、答え、見つかんなくてッ……」
「A…大丈夫、一旦落ち着いて？」
「ッ……ごめん、ごめんね一松…」


ギュッと一松の服を握る

そうでもしないと、涙が溢れそうで


すると、不意に体が抱き寄せられる

えっ……？



「い、一松……？」
「……俺、Aが悲しいと悲しいよ。だから……泣かないで…」


その声色に胸が締め付けられる

私の体を抱きしめる腕が、力強いのになぜか弱々しく感じて


どうして……？


「一松……」
「A……A、俺…」
「どうしたの？悲しいの？大丈夫？」


不意に

本当に意味もなく、母の棺にすがる父の姿が思い浮かんだ


どうしてなのか、それが一番に頭に浮かんで


「お母さん……」
「え……？」
「私のお父さん、お母さんが死ぬ前はすごく良いお父さんだったの…」


どうして死んじゃったの

どうして、あの時私……




「私…今でも、悔やんでるの……」



どうしてあの時、いうことを聞かずに道を飛び出してしまったんだって


私とお母さんの最後は喧嘩で終わってしまった…



「私、なんで……いうこと聞かなかったんだろう…私はなんで、あの日お母さんと喧嘩しちゃったんだろう……私が大人しくいうことを聞いていれば、あの時お母さんが轢かれることもなかったの……」



目の前に広がる血

それは、私の腕から流れるものよりも綺麗で
その美しさを求めて私は自分を切るのかもしれない


母を思い出せるように


優しさを求めて、愛を知って

それなのに……



「私の、せいで……」



お母さんみたいになりたかった

それだけど、私が憧れを潰した



「消えたのは、私が消してしまったから…愛も、自分で消してしまった。そんな私を愛する人なんて、そんなの偽りに決まっていると決めつけた」




空っぽは嫌なの



私を愛して

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