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【 XXXVIII 】 ページ41

成功率は分からない





失敗すれば僕も死ぬ





「僕の寿命を半分渡す」





小さな頃叔父に教わった魔法のひとつ
死んだ人を連れてくるなんてとても危険なことだから本当に大切な人にしかやってはいけないと固く言われた





僕は君以上に大切な人なんていない





「離れて」





Aの前髪を優しくかきあげておでこに手を置く
淡い光が僕を包み込んだ





身体の中から生気がなくなっていく
僕の人生ひとつで君が息を吹き返してくれるなら





君と一緒にいることができるなら僕は構わないよ





心残りしかないんだ





僕は臆病だから君に何一つ言えてないんだ





君に嫌われるのが怖かったんだ





減っていく生気を感じる中、ぎゅっとAのおでこに置いていた手が握られる感覚がした





「また一人でやろうとした!」





目を開いた先にいたのはソフィー





「ソフィー、ダメだ離れないと…!」





「みんなで生きるの!ハウル一人なんかに背負わせないわ!私とハウルの寿命を三人で分けて!」





光がキラキラと放たれ少しずつ消えていく





Aの顔を覗く





ピクリとも動く気配がないと思っていた瞳がゆっくりと開いた





「…ハ…ウル、ソフィー、も…いる?」





小さな唇が小さな声で言葉を紡ぐ
ソフィーはさっきとは違う意味でまた涙を流していた





「A!!!」




ソフィーがAの首に腕を回す
僕もAの首に腕を回し抱きついた





「よかった…本当によかった」





「あれ…私、死んで…?」









何があったのか分かっていない
なぜ今目を開いて視界にみんながいるのか分からなかった





目を閉じる前に見た光景は燃え盛る街と落ちていく自分だったからだ





次に目を開くのは冥府だと思っていた





ここが冥府だったとしたら神は意地が悪すぎる





首に手を回していたソフィーはズルズルと降りて膝に顔を突っ伏し肩を震わせていた





「ソフィーの髪、綺麗な星色になってる」




サラリと短くなったソフィーの髪を撫でる





「…本当に馬鹿だな、君は…怒るぞ」





「……もう怒ってるじゃない」





怒りながらも涙をながすハウルの頬を親指で撫で、涙を拭ってやる





確実に私は死んでいたはず
ここが本当に現世なのだとしたらそれはきっと…





「…使ったんだ」





ハウルが私に人生をくれたのだろう
馬鹿な人だ、本当に





私は貴方の人生が何より大事だというのに

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ベニテングダケ(プロフ) - はじめまして!「ハウルの動く城」好きなんですか?私は大好きです!なのでとてもルイさんの作品を楽しく読ませていただきました。昨日ハウルの動く城を(金)ローで見てハウル熱がふきかえされました!それでこの作品に出会ったのです。とても素敵な作品だと思います! (2021年4月3日 3時) (レス) id: e33603a458 (このIDを非表示/違反報告)
ハリア - とても内容も深くてハウルも好きですがこの小説のお話がとても感動して好きです。またいつか新しい作品があれば楽しみにしています。 (2021年4月3日 1時) (レス) id: ff848e5d79 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - Aの化身さん» 初めましてこんにちは!そう言っていただけて凄く嬉しいです!2年経ってもこの作品を見つけて読んでくださる方がいる事実だけでもとても幸福なのに素敵な感想までほんとにありがとうございます! (2020年7月18日 12時) (レス) id: 7e9bb53309 (このIDを非表示/違反報告)
Aの化身(プロフ) - 2年越しから失礼します。ジブリ作品が再上映されているのを知り、2日連続で見に行った後に懐かしさを覚えて作品を拝見しました。ハウルファミリーは本当あったかくて大好きなので、読んでほっこりしました。とても面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年7月15日 3時) (レス) id: b8de8932f8 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 紅音さん» 少し凝った設定になってしまいました笑笑設定を作るのが好きなので結構盛っちゃうタイプなんです笑そんな風に言っていただけて本当にありがたい限りです!今までご愛読ありがとうございました! (2018年8月29日 10時) (レス) id: 1b9f7d69e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルイ x他1人 | 作成日時:2018年8月16日 20時

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