近くて遠い、その距離を。 (ページ7)

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あるアイドル──当然仁兎さんのことだ──のファンで、彼のステージを見に来たらかつての同級生が彼と共にステージに立っていたこと。見ているうちに彼が、そのユニットがより一層好きになったこともあり、差し入れを用意したこと。用意したはいいがどこに出せばいいのかわからないこと。受付を探そうにも見つからないし、スタッフさんらしき人も見えないこと。で、困っていると話した。日々樹さんは時たま相槌をうち、真摯に聞いてくれた。そして私に言ったのだ。

「なら、私がお届けしましょうか？」
「……え、」

いやいいのかよ。

「差し入れの受付は準決勝の後には締め切られてしまいましたしねえ……Knightsや流星隊といった古豪が緒戦で敗退、などと予想外の展開だらけでスタッフもだいぶ焦ったようで……早々に受付を打ち切ってしまったのですよ」
「そうだったんですか……！？」
「ええ、ですのでね、あなたさえ宜しければこの日々樹渉にお届けさせてください。折角用意していただいたのですし、届けて差し上げたいのです、あなたからの愛を……☆」

差し入れは、プレゼントは、目に見える形で贈られるファンからの愛、なのだ。きっと。
届けたい。受け取ってほしい。だから。

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