神の目 ページ46
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試合再開のホイッスルが鳴り響く。
戦場と化した恐ろしい試合の中で
最も気をつけるべきは犠牲者を出さない事だ。
「(野坂さんの言う通り、本物の地雷なんてありえない。何か、何か見落としているに違いないんだ!!)」
「(求め、見つめたものの先に道は必ずある)」
かといって、ただ指を咥えて試合が終わるのを待つはずもない。野坂の参謀役光と、神の目を持つアフロディが良い例だ。彼らは試合の中でフィールド全体を見回しながら、地雷の根源を探り始めた。
「(あの時のあの動き……あそこのフィールドに何かしたに違いない。いったい何を……)」
そしてそれは、戦術の皇帝野坂も同じことだ。彼もまた、注意深くアメリカの動きやフィールドを観察しながら大きな瞳を鋭く細めている。
そしてボールは野坂から坂野上へ繋がれていく。
「──!?また……!」
しかし、またしても敵選手が歩幅に合わせるように両サイドへと現れた。氷浦の時と全く同じ戦法に、仲間たちは坂野上の身を案じて声を張り上げる。
「坂野上!」
「逃げろ坂野上!」
振り切ることができず、激しいあたりで地雷原に押し込まれた坂野上が爆発に巻き込まれたその一瞬、アフロディと野坂が「あっ…」と声を合わせて目を見開いた。何かを勘づいたといった面持ちである。
<三人目……三人目です>
悲壮感に溢れた実況者の声が虚しく会場の中を反響する。FFI始まって以来の悲劇に観客達はブーイングをする気力さえ奪われ、虚無感に苛まれていた。
「いったいどうすればいいんだ!」
「オリオンのやつらめ……これが、これがサッカーかよ!」
担架で運ばれていく坂野上を仲間と共に見送ったタツヤは目を伏せると、悔しそうに拳を震わせる。そして攻めきれない歯痒さから剛陣は悪態を吐いた。
「みんな、道は見えた」
絶望的かと思われたこの状況に突然、神の手がイナズマジャパンに差し伸べられた。俯いていた選手達は次々と顔を上げ、アフロディを見つめる。
「アフロディさんも気づいたんですね
"地雷の正体"に」
さらに手を重ねるように差し出された皇帝の手。地雷原の攻略法を見つけた彼らは不敵な笑みを口元に浮かべると、アイコンタクトを取り頷き合う。
「誤魔化すことなどできはしない。
僕の、神の目はね」
永遠に降り止まないような豪雨が瞬時に止まったかのような驚きが、そこにはあった。緋色に輝く美しい瞳は試合の果てに、神は何を見るのか___
(───反撃、開始だ)
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時