マインドコントロール ページ42
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誰も知らなかったヘブンズタイムの弱点。指先に視線を集めることで脳へ直接信号を送る暗示効果をもたらしていた。
しかしそれも、アメリカが仕組みに気がついたことにより類を見ない方法で無効化されてしまう。
「一度暗示にかけられると簡単には解けないはず。敵はどうやってその暗示から逃れたんですか?」
「それは彼らが兵士だからだろうね」
Aの素朴な疑問に、知識の豊富な析谷が答えた。小首を傾げて再度問いかければ、析谷は顎に手を添える仕草を見せると口を開く。
「兵士は長官の命令には絶対服従だ。時に自分の命を犠牲にしてでも下された命令を果たす。きっと命令されたんだよ」
「命を?」
何も考えず、何も見るな。何も聞くな。ただ長官から与えられた命令だけを果たせばいいのだと。例え命が尽きようともそれを捧げる覚悟でフィールドに立っているのだ。
「そう命じられれば、彼らは誰かの姿も誰かの声も一切気にかけない」
「一種のマインドコントロール、ですね」
Aの例えに析谷は「あぁ」と言って重々しく首を振る。命を落とすその瞬間まで操り人形のように動き続けることを自らの意思で選んだ彼らに、Aは固唾を呑んで視線をフィールドに戻した。
「それほど強いメンタルの持ち主でなければ、戦場で生き抜くことはできないということさ」
アフロディから暗示にかけられる前に、彼らは命令という名の暗示を長官からかけられていた。熱を持たない闇人形のような冷たい瞳を持つ彼らを監督は「恐ろしいですねぇ」と揶揄した。
噛み合わなかった歯車が音を立て動き出す。ヘブンズタイムを打ち破ったアメリカ。しかし彼らは攻め上がる意思を全く見せずに、キーパーを除く十人がフィールドの中央に跪くようにして集まった。
「あの動き…まさか!」
コブラを中心に散開してフィールドを縦横無尽に駆け回る。その動きに見覚えがあるAは額から嫌な汗が滲み出てくるのを肌で感じた。
目まぐるしい速さでフィールドを駆け抜けたアメリカチームは五人ずつ左右に別れて縦に整列した。それ故にゴールまでの中央はがら空きだ。
「なんだか知らねぇが舐めた真似しやがって!」
突っ走る不動。
敵が何を仕掛けているのか分からない以上、無闇に動くのは戦場に武器無しで突出するようなものだ。そして不動が、日本陣内とアメリカ陣内の境界線とも言えるセンターラインを超えたその直後。
凄まじいほどの爆音が会場全体に響き渡った__
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時