兄....... ページ30
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「これ、フロイにつけられた痕ですよね」
髪を後ろに流され、以前つけられたフロイの痕をつぅー…と人差し指でなぞる光にAは擽ったそうに身動ぎする。だがそれを許すはずもなく光は「俺が上書きします」そういうと首筋に唇を寄せた。
「いっ…た」
有無を言わせぬ光の行動。突然吸い上げられるような痛みが走ると、Aは顔を歪ませながら光の肩に手を乗せて痛みに耐える。
「き、消えた!フロイくんの、もう消えたから……っ離し、て……充くん」
重ねるように吸い付いてくる光に耐え兼ねたAが肩を叩いて訴えかけると、彼は名残り惜しげにその痕を舐めてから顔を離した。
くた、と光の肩に頭を預けて息を整える。
「先輩、どうしてさっき泣いていたんですか」
心の中に詰まる罪悪感と複雑な気持ちに支配されそうだ。Aは突然投げかけられた質問に答えようにも息を整えるのが精一杯で何も言えずにいた。
「話したくないないならいいですけど……それより続き、しましょう」
微笑んだ光にそのまま肩に手を置かれ、Aは体を離される。そして絡み合うような熱い視線を交わらせると顔をゆっくり近づけてくる。
「ま、待って!ちゃんと話すから」
唇が触れ合うまで後数センチというところでAは反射的に顔を逸らして拒んでしまった。
キスを拒まれたことが気に障ったのか、光は不服そうな顔で眉間を寄せるとAの頬に向かって手を伸ばし、包み込むように寄せてから前を向かせる。
「実はさっき、灰崎く__」
「聞きたくありません」
「え……」
明らかに先ほどよりも冷たい態度を取る光にAは当惑の眉を顰めていた。灰崎の名前が口から出たが故に、誰かに取られたくないという独占欲から走った光の身勝手な行動だ。
「この時間は誰の邪魔もない二人だけの時間だから。他のやつのことなんか何も考えなくていい、俺だけを見てください」
まるで洗脳のような言葉でそう言い聞かせるように放てば、目の前の少女から美しい瞳の輝きが失われていき、光はAから目を逸らす。
「(Aは俺が兄ちゃんの代わりに守らないといけないんだ。笑わなくった先輩なんて、もう二度と見たくない。他の人にも……絶対渡すもんか)」
エゴにエゴを重ねて自分を正当化した
狼少年は、少女の首筋に再び噛み付くと
満月が照らす夜の海へ沈めた。
(Aさんは俺が守る。だから安心して、兄ちゃん)
(やめろ光、俺はそんなこと望んでない…)
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時