本音 ページ16
❀
皆がアフロディの元へと集まる中
ヒロトはフィールドの芝生を
引っこ抜いては遠くへ放り投げていた。
子供のようなひねくれた姿にほとほと呆れていたたAはその後ろに立つと大きなため息をつく。
「だっさい負け方してんじゃないわよ」
「うるせぇ」
一度は振り返ったヒロトだが、すぐにバツの悪そうな顔を見せると、ふいっとそっぽを向いてまた芝生を弄り始める。あれだけ大見得を切っていたのに負けてしまったのだから無理もない。
「あーあ。あんたが負けたからアフロディさんと連携技することになっちゃった」
「……」
瞼を伏せ、わざとらしく肩を落胆させて芝居気たっぷりな口調でAが煽ってみれば、効果があったのかヒロトは芝生を掴んだまま固まっていた。
「お前は俺なんかと組むよりアイツと組んだ方がやりやすいだろ、この話はもう終わりだ。頑張れよ」
掴んで抜けた芝生を手のひらからぱらぱらと零しながら突き放すように彼はそう言った。いつものヒロトらしくない気弱なその態度にAは眉根を寄せる。
「確かにそうね。アフロディさんは優しいし綺麗だし神様っぽいし。常識もそこそこあるし、エスコートも上手そうだし、ヒロトより全然いいかも」
Aの一語一語が、ヒロトの気持ちに棘を植えていく。お互い素直になれない性格上から、このように煽ることでしか前には進めないのだ。
「そーかよ!!」
片方の拳をフィールド上に叩きつけ
勢いに任せて立ち上がったヒロトは
そのまま声を荒らげて歩いていく。
「でも……」
「あぁ?」
Aが何かを言いかけるとその足が止まる。
「私は、そんなあんたと連携技を作りたい」
ほどよく鍛えられた背中にAが
本音を零すとヒロトは一呼吸おいてから
肩を大きく回して振り向いた。
「ヒロトはいつも個人練習が終わった後、自分も疲れてるはずなのにご飯も食べずに遅くまで私の練習に付き合ってくれた。それがすごく嬉しかったの」
「……!」
しんみりとした言い方で面と向かって本音を告げたAに、彼は固くなっていた肩の凝りがすーっと溶けていくのを感じた。
同時に顔中から一面に湯気が湧き出すような気がして、彼女の顔をまともに見ることが出来ず、うつむき加減に視線を逸らす。
「な、なんだよお前……きゅ、急にしおらしくなってんじゃねぇよ!……調子狂うだろ」
恥ずかしさから逸らした視線は
あらぬ方へ向いて余計に
不自然さを際立たせただけであった。
190人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時