一之瀬、クーデターに沈む ページ2
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目の前で起きた信じられない
悲惨な光景に、震える手で口を覆う
Aの瞳は瞳孔が張り裂けんばかりに
開かれ、体は小刻みに震えていた。
「一、之瀬さ……っ!!」
そして円堂に続いて弾かれるように、掠れた声で一之瀬の名を呼ぶと彼女もまた駆け出した。
「よく分かった!君たちにアメリカ代表の能力はない。もっともこの状態では、フィールドに立つことすら覚束無いだろうがな」
Aと同じくしてフィールドの中へ足を踏み入れ後ろ手を組みながらネイビーインベーダーの司令官は、倒れて動かない一之瀬の前へ立ち止まるとそれを無様だと見下ろして鼻で笑いとばす。
「貴様ァ…ッ!」
屈辱から肘をつき、起き上がろうとした一之瀬は声を荒らげる。しかし体に電流が流れるような痛みが流れると再び地面に這いつくばってしまう。
「動かないで一之瀬さん!」
それでも尚、立ち上がろうとする
一之瀬の元へと駆けつけたAが
膝を折り、肩に手を乗せようとした刹那。
「触るな!!」
「あ…っ」
乾いた音と共にAの手は
一之瀬によって上へと弾かれてしまった。
その光景を土門を支えながら見てしまった円堂が「おい一之瀬…」と八つ当たりをした彼を宥めるように言うがその声は届かない。
「クソッ…!クソッ、クソッ……ッ!」
「一之瀬さん……」
色々な感情がごちゃ混ぜになり
コントロールが効かなくなった一之瀬は
芝生を巻き込んで両手を握りしめると
歯を食いしばって、拳を地面に叩きつけた。
「(こんな時、なんて声をかけたら)」
一之瀬の自 虐を止めさせようと腕を伸ばしたAであったが、今の自分に止める権限があるのか。そんな言葉が頭を過り、伸ばしかけた腕を引っ込めるとAは目を閉じた。
「アメリカ代表は我々、ネイビーインベーダーだ。君たちとの日本の戦い、楽しみにしている」
悔しそうに呻く一之瀬の声に被さるように耳に入ったバハードの言葉にAは閉ざしていた瞼をゆっくりと開いて睨みつける。
「……」
「……」
Aの鋭い視線に気づいたのか、円堂から視線を逸らしたバハードは口角を上げた。そして立ち上がった彼女の元へ一歩また一歩と歩みはじめる。
警戒するように後退るAだが
その強面な顔から恐怖におののき
上手く下がることができなかった。
「日暮A」
「っ!」
名前を呼ぶと鍛え上げられた大きな腕が
Aに向かってゆっくり伸ばされる。
そして___
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時