【あんスタ短編集・完全趣味】 (ページ11)

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Knights the Phantom Thief 2 ページ11

五人の人影がマントをなびかせて華麗に宙を舞う。

正確には動きが美しすぎてそう見えるだけなのだが。

屋根から屋根へ、電柱から塀へ…

それは翼を持った天使のごとく。

漆黒の夜に放たれた。

全ては女王の愛すべき宝石たちを取り返すため。

本日の標的はこの街のグレーゾーンの組織…いや会社というべきなのか…の社長宅。

この街で良からぬ動きをしているらしいが、彼らには正直どうでもいい。

彼らは正義のヒーローでもなければ人に漬け込んで金稼ぎをするような非道な輩でもない。

ただ、我が主のために…愛おしい女王のために。

「むこうの警備が手薄だ。そこからいくぞ」

「標的はどこぉ？」

「三階の右廊下の突き当たりから七番目だ。」

「それって真ん中、って言わないかしらァ？」

頷いてにやりとし、散る。

大人数で動いても目立つだけなので末っ子と面倒係は外で待機することになったらしい。

「変わったことがあったらこれに連絡をくれ。ナルに繋がるはずだ。頼んだぞ、リッツ、ナル。」

「りょうかーい♪/はいは～い、じゃ、がんばってね～」

そのまま三人を見送る、末っ子とリッツと呼ばれた青年二人。

三人が行って数分後、ようやく末っ子が口を開く。

「あの、凛月先輩…私どうしてもわからないことが…」

「ああ、王様と女王のこと…？」

そしてまた、風の音。流石になんていうか悩んだようだった。

敵地内でも先程見せたような余裕を保てるお方が黙った。それだけでなんとなく、察したような気もしてしまう。

いや、むしろ元からなんとなく分かっていた…否、知っていたのかもしれない。

黙って俯き始めた末っ子を見かねて先輩は言う。あやすように、残酷だと知りながら。

「王様はねぇ…女王の、夢を見てるんだ。」

それを告発できない自分たち自身を戒めるように。

「じゃあ…」

申し訳なさそうな顔をする末っ子に、この子にも罪を着せなくてはならない罪悪感に苛まれる。しかし、今仕えている先は実質王様のようなものだ。だからではないが、とてもじゃないが言えない。

……あんな笑顔をされたら。

「まだ、そのときじゃない。王様の前で黙っていられる？」

少し悩んだ末、頷いて上を見た時には芯の強そうな目をしていた。この子に告げるのも嫌だけれど。そんなことじゃあ折れないと信じて…

…願って。

「そうだよ、女王はもうこの世にはいない。」