【オリオン】天狼の伴星【フロイ】

２８＝だから、避けられていた ページ28

初めて会った時からAはAで、

いつもニコニコしていて、本心が読めないような子だった。




『A！サッカーいっしょにやろ！』


『…申し訳ございません。生憎怪我のしかねないスポーツごとは禁止されていまして』




ファーストコンタクトはフラれた。




『武道なら多少心得が…』

『ブドウ…？』







ある時は、茂みに隠れて驚かしたら…




『わっ！！』


『………』




最初は真顔から

にっこり笑い返され、会釈してそのまま行ってしまった。




(ミツルでも、驚いてくれたのに…)







庭で少し体を動かすつもりが、つい夢中になっちゃった時は…




『はー、疲れたー』




『フロイ』


『A…！』




Aから声をかける事なんてなかったから、珍しくて驚いた。

何かと駆け寄れば、




『ベルナルド様に呼ばれたので、家を空けます』


『うん、わかった。兄さんによろしくね』


『えぇ、伝えときま───…』




Aの声が途切れて、何かと首を傾げると




『女人の前で素肌を晒すなんて…はしたなくてよ』


『えっ…？ええ？？』




その時のAの顔は…


笑顔なのに…すっごく怖かった。




ちょっとカットソーのネックライン引き上げて汗を拭っただけなのに…。









いつも愛想笑い、Aから声をかけてくる事なんてほぼ無い、母さんと兄さんの呼び出しには必ず迎う。


いつも、僕から距離を取るような振る舞いだった。





父さんは小さい頃に亡くなって、母さんは始めから僕に興味は無くて、兄さんは多忙になった。


母さんが利用する為に連れてこられた、形だけのフィアンセだとしても




家に家族の誰かがいるっていうのは嬉しくて、心の拠り所だったんだ。




情け無い話し、きっと僕は寂しかったんだ。誰かにあたたかい愛情のようなものを求めていたんだと思う。




けれど、Aからは避けられていて───









『Марма、Aは11ですよ、』

『だからじゃない。何においても誰よりも早く事は動かなければ成功は納められないのよ』

『ｯ……』




庭から、開いていた窓越しに聞こえた。









『Aが16歳になり次第、婚約するのは貴方よ。ベルナルド』









母さんに利用されていたのは、僕の方だった。




『………ｯ、』




抱えていたサッカーボールを抱きしめ、顔を埋める。




浅い関係でも、僕に出来たフィアンセは




今までも、これからも母さんと兄さんのものだった。

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