太宰ノ小噺 ページ37
「ふふっ」
彼女は相変わらず、好い反応をしてくれる。
普段のポーカーフェイスとは一変して、ほんの少し私が弄るだけで
「如何したんだい? A」
「......別に、何でも有りません」
分かり易い。
あの科白に嘘も偽りも無い。ミズクラゲが彼女に似ていると云うのも、私が彼女を可愛いと思っていると云うのも、相手には伝わっているかやや微妙な所だが、私なりに気持ちを精一杯伝えたつもりでは有る。
彼女は気づいているのだろうか? 否、
隣を歩く彼女の耳が、ほんのりと赤く染まっている。其れを私は見逃さなかった、余り表情の変化が無いように見えるけど、こんな風に愛らしい表情を見せてくれるのだ。
＿＿＿独占欲が湧いてしまうよ。
「ねェ、Aちゃん」
「何でしょうか」
「楽しいかい?」
何となく尋ねてみた。
さも余裕が有るように振舞っているけれど、本当の事を言って仕舞う楢ば、私は少し焦っていたのだ。
女性との交際が始めてじゃあ有るまいに、柄にも無く緊張している。
『綺麗だよ』
『好きだよ』
『愛してる』
口説く為の科白は簡単に思い付く、なのに私の気持ちは中々彼女には届かない。あの時、中也に云われた戦線布告が脳内に響き渡った。
「......太宰さん? 聞いてますか?」
「......! 嗚呼、御免ね。少し呆けてしまったみたいだ。何だい?」
考え事をしてた所為で、彼女の言葉を全く聞いていなかった。相手の方は、やれやれと肩を竦め「自分で聞いた癖に」と、刺々しい言葉を投げてくる。
確かに今のは私が悪い、故に何も返せなかった。
「私に“ 楽しいかい? ”と、尋ねましたよね」
「嗚呼、尋ねたよ」
「............楽しくなければ、一緒に居ませんよ」
其の科白は、予想外だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 399人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます！ いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます！嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (
レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね！羨ましいです！ (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ﾔﾖｲ―さん» コメント有難うございます！成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です！ (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ﾔﾖｲ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております！笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ﾔﾖｲ―さん» 初めまして！いつも！？ え、え、有難うございますっ 楽しく！？...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね！感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミサぽん | 作成日時：2019年5月27日 11時
