シニガミ様の仰せのままに。

story18 ページ22

あの後、朱音さんは僕を気遣って僕が泣き止むまでずっと背中を撫でてくれた。

朱音「大丈夫？」

A「うぅ……！はい……」

何とか泣き止んだ僕に、朱音さんは優しく微笑む。

僕が何で泣いていたのかは、気を遣っていたのか聞いてこなかった。

さて…ここまで色々してもらったんだ。今度は僕がやる番だ。

A「それじゃ……朱音さんの魂を狩らせていただきます」

朱音「ええ、お願いするわ」

朱音さんの了承を得た僕は、ずっと持ちっぱなしだった鎌をゆっくりと振り上げる。

そして…あまり痛みの無いように、そっと振り下ろす。

鎌が後１cm程で朱音さんに届きそうになった時…

朱音「私の事、よろしくね。Aちゃん」

朱音さんがそう呟いたから、僕は鎌を止めかけた。

同時にまた泣き出しそうになったけど、またやらかす訳にもいかずに、そのまま振り下ろした。

瞬間、朱音さんは光に包まれ、青白い魂へと変化する。

それは僕のドクロの髪飾り―――魂回収機に吸い込まれていく。

一連の事が終わると、僕はその場に泣き崩れた。

A「うわああああああああああああああああああああッ！！」

その後、先輩たちと幽が駆け寄ってきたのだが、その時の記憶は無い。

ただ、ずっと泣いていたのだけは確かな事だ。

こうして、僕の初の死神としての仕事は、お世辞にも良い結果にならなかった。




風丸「……落ち着いたか、紅桜？」

風丸先輩が僕の頭を撫でながら、心配そうな顔で僕を覗き込んでくる。

ちなみに今僕らは、現世から戻り冥界(死神たちが住む世界)の喫茶店を訪れていた。

泣きじゃくる僕を見かねて、豪炎寺先輩が落ち着かせる為に提案した場所だった。

A「はい、何とか……」

風丸「それなら良かった」

僕の隣に座る風丸先輩は、そう言いながら僕の頭から手を離す。

僕が落ち着けたのも、風丸先輩が僕の頭をずっと撫でていてくれたからだ。

A「すいません……初日からこんなミスばっかで。先輩たちにも迷惑かけちゃって……」

円堂「迷惑なんてそんな！！」

そう、僕はてんで駄目な子なんだ。

前だって…『失敗作』だったのに。

豪炎寺「紅桜……俺はお前はよくやったと思っている」

A「そんな訳ッ！？」

豪炎寺「何があったのかは聞かないが、お前は泣きながらもちゃんと最後まで仕事をこなしたんだ。逃げ出したりもせずに。だから、俺は紅桜を誇りに思う」

豪炎寺先輩の静かかつ力強い言葉が僕の心に響く。

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