お気に召すまま 〜キスの夜の夢〜

act 20 ページ20

タマーガレットside

良かった…みんな幸せになれて…

今まで人の幸せをひがんでいた自分が、こうやって出会ったばかりのみんなの幸せを喜んでいるなんて不思議。
それは…きっとミヤターニオに愛されたから。

だけどやっぱり私は無理ね…
いくら跡継ぎでないとはいえミヤターニオは領主の息子。羊飼いの娘なんて身分が違いすぎる。

愛してくれてありがとう…
だけどさよなら…

そっと立ち去ろうとした私にミヤターニオは気づくとガッチリ腕を掴んで言った。


『タマーガレット、どこにも行かせないよ』


私の心の中など全て見透かした様子で、抗う私をしっかり捕まえて離さない。


「ダメ！ミヤターニオ離して！私…」


その時、正門から一人の紳士が屋敷内へ入って来た。


『センガー領主様の屋敷はこちらでしょうか？』

『さよう、私がセンガー領主。そなたは？』


色白の品格ある風貌の紳士は答えた。


『私はクサナギーニョ。ホワイトストーン領主の長男にございます。実はこのセンガー領にかねてより探している我が姉がいるという噂を聞いて参ったのです。そこでぜひとも領主様にご協力頂けないかと』

『これは失礼いたしました！クサナギーニョ様、もちろん協力いたしますぞ。で、お姉様のお名前は？』


クサナギーニョ様が告げた名前は…


『あいにく姉の名前はわからないのですが、母の名はカトリーヌ…』


…え？私の母の名前…まさか…！


『父と母はいわゆる政略結婚…父は家同士で決められた結婚で愛する人との仲を無理やり割かれてしまった。しかしその時すでにその女性との間に娘が出来ていたのです。

最初それを知った時はショックでした。しかし今、重い病を患いうわ言で話すのはその女性と娘の事。同じ男として今なら分かる…父の気持ちが…』


…私は…そして母はこんなにも父に愛されていたのだ…

溢れる涙を止められずいる私に気付いたクサナギーニョ様は…


『おぉ、あなたはもしや…父が大事にしている絵の女性にそっくりだ』

『タマーガレットと申します。母の名は…カトリーヌ』


クサナギーニョ様は私にホワイトストーン領に一緒に来てほしいと言ってくださった。


「あの…一つだけお願いがあるのですが…」

『姉君、何なりとおっしゃって下さい』


私はミヤターニオの方を向いて言った。


「婚約者を同行してもよろしいかしら？」

『…タマーガレット！どこまでも付いてゆくよ！』




…こちらもめでたしめでたし、のようですね♪

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