30話 開戦前�� ページ33
服を頂いた後、特に新調する武具も防具もないので僕はリムル達と別れ、2人と共に屋敷に戻っていた。
「今回はお留守番、ですか。偶には暴れ回りたいものなのですが……」
「十分いつも暴れているような気がしますけど」
屋敷に入るなり、レイラはポツリと一言。
それに対して蒼熾が余計な一言を口にする。
蒼熾の言葉を聞いたレイラは、綺麗な笑みを浮かべながら蒼熾に詰め寄り、
「蒼熾、何か言いましたか？」
と言い、一発で気絶させていた。
よ、容赦が無い……。
レイラは蒼熾を肩に担ぐと、良い笑顔をしながら僕に問う。
「ケン様、新しい修練場は出来たんですの？」
「あ、うん。奥の部屋から地下に行って、扉を開いた先にあるよ」
「そうですか、有難う御座います。では、少しお馬鹿さんの相手をしてきますわ」
「い、行ってらっしゃい。ほどほどにね。」
僕の言葉を聞き終えるとレイラはクルリと向きを変え、奥の部屋へと去って行った。
蒼熾、無事に戻って来れるかなあ。
蒼熾の事を心配しつつ、自室に向かう。
それにしてもお留守番かぁー。
リムル達の実力から考えても十分過剰戦力ではあるけれど、僕も行きたかったな。
両親や里の皆の仇を討ちたかったし…。
…仕方がない、今回はベニマル達に頑張って貰おう。
2階の自室の前に着くと、扉を開いて中に入ろうとする。
「よお、1ヶ月振りだな」
ガチャ
そっと扉を閉めてしまう。
あれ？お、おっかしいなー。
部屋の中に魔王が居た気がするなぁ。
気のせいだよね？ね？
僕はただ疲れて幻覚を見ただけだ。
すーはーと深呼吸をする。
よし、入ろう！
カチャ
「なんだよ、ケン。人の顔見るなり閉めやがって」
……やっぱり幻覚でも何でもなかった。
ギィは、人のソファを我が物顏で座って寛いでいた。
「何で貴方が此処にいるんですか！？」
「ん？お前とオレとの仲じゃねえか。気にするな！ほら、座れ！」
豪快に笑いながらソファを叩くギィ。
はあ、と溜息を吐きつつギィと対面するように座る。
「それで、本題は？」
僕は疲れ気味に問う。
対して、ギィは何が面白いのかニヒルに笑いながら、
「お前が引っ越したって聞いたから、来てみただけだ。」
と言った。
スキルで視てみるも、本心のようだ。
「本当にそれだけみたいですね……はあ、コーヒーでも注ぎますから飲んだら帰ってくださいね」
「おう！」
開戦前日だというのに、なんとも言えない空気の中、僕はギィを満足させるのに苦心するのであった。
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作者名：ミズナ | 作成日時：2019年4月10日 20時
